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宣伝担当者が知っておきたいクリエイティブの基本―コピーライティング

思考の混沌状態が、質の高いコピーを生む

佐藤夏生(HAKUHODO THE DAY)

コピーは個人の記憶や体験に基づいて生み出すものであることが大きな特徴。コピーを書き始める前の、情報・身体感覚のインプットが重要なプロセスとなる。

人の意識を変えるスイッチ

「コピー」と「コンセプト」。混同されがちな、この2つの違いを明らかにしていくために、まずは「言葉」の話をしたいと思います。「言葉」には、それが使われるシーンや目的によって、大きく2つの役割があると考えています。(1)新しい価値・概念を指し示す言葉。そして、(2)その瞬間に人の心を動かす言葉です。厳密には、はっきりと分けられるものではありませんが、社会全体に新しい価値を提示する前者のような使い方を「コンセプト」、目の前にいる一人の人を動かそうとする後者のような使い方を「コピー」と分けて考えることができると思います。

例えば「Facebook」は、その言葉自体が人の心を動かして、世界的な利用者数増加につながったわけではありません。いろいろな人の日常生活や性格といった情報をブックマークできるサービスを「Facebook」と名付け、「これまでになかった」概念・サービス・カルチャー・行動を形づくったわけです。これがコンセプトです。

一方でコピーは、その言葉そのもので人を「ハッと」させて、気持ちを動かし、意識を変えるスイッチのようなものです。ですから、コピーは、その対象となる企業や商品・サービスなどの全体・全容を正確に言い表す必要はありません。個人の経験や考え方・感じ方に基づいて、相手の共感を呼び覚ますような言葉、それがコピーです。コンセプトが社会的な視点を持っているのに比べ、コピーは自分の記憶や体験といった個人的なものが発想の起点になるので、書くときの視座が違うと言えるかもしれません。

もう少し言うと、コンセプトは、プロジェクトが出発するときに必要なもの。一方のコピーは、“基本的には”プロジェクトの最後、お客さまに対してサービスや商品を届ける段階で機能するものです。その点では、ワークする場所と時間が違うとも言えます。

ただ、これまでさまざまなプロジェクトに携わってきたなかでも、コンセプト、コピー、そしてネーミングという3つの言葉を明確に使い分けている人は、ごく数人です。コピーライターやクリエイターの多くは、そのあたりを感覚で書いていると思います。

リアルからリアリティを生み出す

言葉を使ってベクトルを生み出し、人々を方向づける「コピー」。このコピーも、エモーショナルな表現と、事実に基づいて情報を端的に伝えるものに分かれると思います。どちらが良い・正しいということはありませんが、私自身は後者のほうを考える機会が多いです。

先述のとおり、コピーは個人的な記憶や体験をベースに、人の共感につながる情報を抽出してつくるもの。ですから、コピーを書くには、まずは徹底的に個人の主観を見つめる必要があります。自分が過去に見聞きしたことや、商品に触れたときの身体感覚を掘り下げたり、ユーザーが商品を使ったときに感じたことを聞いたりして、その企業やブランド、商品やサービスの「リアル」を知るべきです。

例えば、HAKUHODO THE DAYがパートナーを務めるブランドの一つに、メルセデス・ベンツがあります。商品であるクルマのまわりには、実にさまざまな「体験や感覚」が存在します。自分がハンドルを握る楽しさ、友人と遠くへ出掛ける喜び、所有することで得られる誇らしい気持ち …

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