ビッグデータ活用の難しさに直面する企業が多い中、カー用品の販売・取付・交換サービス、車検・整備、車の買取・販売サービスを提供する小売店舗で構成されるフランチャイズチェンを運営するオートバックスセブンは、先進的な取り組みを行っている。860万人のアクティブ層を含む会員に対し、ビッグデータを用いてパーソナライズしたキャンペーンを実現。その舞台裏について聞いた。
(左から)オートバックスセブン マーケティング部 CRMグループ 課長 福島将人氏、日本情報通信 ソリューション推進本部 ソフトウェア・テクニカルセールス部 植田春樹氏、同グループ長 中田寛之氏
適切なタイミングで適切な人に
──会員向けマーケティング施策として、どのようなことを行っていますか。
福島▶ プロモーションはDMとメールが中心です。DMについては、需要時期に合わせて一斉に配信する統一DMと、顧客ごとに異なる内容を送る定例DMの2種類があります。定例DMは、誕生日や車検整備、オイル交換促進など、複数のコンテンツパターンのフォーマットがあり、顧客別に適切なタイミングで配信しています。
──そうした施策を行う中で、当初はどのような課題がありましたか。
福島▶ 会員情報を抽出するためにシステム基盤としてデータウェアハウス(DWH)がすでに導入されており、DWHへの負担をどのように軽減するかが大きな課題でした。しかし、顧客をクラスタ別にデータ抽出する場合、DWHに大きな負荷がかかってしまい、既存システムに影響が出てしまいます。そこで、3年前に組織を再編成してデータ管理の一元化に取り組み、「IBM PureData System for Analytics(Netezza)」を導入しました。これにより、必要な時にデータを活用できるようになり、これまで1週間かかっていたビッグデータの分析やターゲティング設定が3日に短縮され、さらに迅速にPDCAを回すことができるようになりました。
植田▶ 日本情報通信は、ビッグデータの分析からマーケティング・キャンペーンまでの一連の業務をサポートさせていただき、業務フローに応じて最適なソリューションを増やしていきました。
福島▶ 例えば、「IBM Campaign」の導入では、マニュアル処理で行っていた作業を自動化することができ、かなり負担が減りました。また、キャンペーンの結果をレスポンス履歴からすぐに見られるようになったことも大きいですね。導入前は、施策の効果も実績値のみで測っていましたが、コントロールグループやA/Bテストを実行することで効果がきちんと“見える化”され、周囲の納得度も高くなりました。
──マーケティング施策の効果には、どのくらい貢献しましたか。
メールの開封率が低下する中、専用アプリによるプッシュ通知は大きな成果を上げている。
福島▶ DMを主体にして、メールとスマートフォンアプリのプッシュ通知でフォローを行うことが多いのですが、DMは配信のたびに購入率が上がっており、従来比では120~130%です。また、メールが開封されづらくなる中で、プッシュ通知をトリガーにしたアプリのリアクションも非常に良く、従来のメールと比較して開封率は2倍、購入率も2倍弱という結果が出ています。今後は紙のDMについても、デジタルにシフトしていくことを検討しています。
植田▶ セグメンテーションの精度が向上したことで、より効果が上がっていますね。
福島▶ そうですね。すでにナビを購入されている人にはナビに関する案内を除外する処理も簡単にできるので、お客さまにとって過剰なコミュニケーションになることを控える調整もしています。適切なタイミングで適切な人に情報を届けられていると感じます。
導入後も活用をサポート
──導入後の活用など、苦労された点はありますか。
福島▶ 導入当初は、運用する部門メンバーのIT経験が少なく、そもそもデータベースはどういったもので、どのように活用するかを理解してもらうことに苦労しました。日本情報通信さんと一緒にカリキュラムを組み、研修を行ったことで、現在ではメンバー全員が活用できるようになりました。また、キャンペーンなら植田さん、マイニングならマイニングの専門の方など、ジャンルごとに専門分野に精通する方にサポートをしてもらえたことも心強かったです。
中田▶ オートバックスセブンさんの場合、福島さんの存在が導入を成功させたポイントだと思います。導入したツールを使いこなして売上を上げたいという強い意志があり、研修も部門メンバーだけでなく他部門を巻き込んで行っていました。ツールは導入して効果を出さないと意味がありませんから、活用方法だけでなく、導入の目的や効果についても説明させていただきました。
植田▶ 通常、キャンペーンツールは、部内でも2~3人のリテラシーの高い方たちだけが活用するケースが多いのですが、オートバックスセブンさんはメンバー全員が活用されているので、珍しいケースだと思います。
福島▶ 研修では、どのような効果が出るのかを具体的に理解してもらうことに力を入れましたね。その点でも、日本情報通信さんに作成いただいた資料は非常によくできていて、研修後の業務もスムーズに進めることができています。
──まさに二人三脚で取り組まれたと。そして今回、マーケティング基盤が一新されました。
福島▶ 「IBM SPSS Modeler」を活用することで、より短いサイクルでより高度な分析が行えるという点に最も期待しています。具体的には、蓄積したデータをもとに、「DMに反応しそうな人」「◯月に来店見込みのある人」などと条件を加えていくと、例えば「◯月に◯◯(商品群)を買ってくれそうな人」と予測して抽出することが可能になりました。また、DMの配信までも自動で行うことができ、さらにメールとプッシュ通知でフォローアップすれば強力な来店促進につながると考えています。
植田▶ オートバックスセブンさんはチャネルもデータソースも多様で、アプローチとしても非常に先進的ですね。
福島▶ 現在はまだ完成形ではなく、ようやくマーケティングプラットフォームのベースができて、スタートラインに立ったという感覚です。今後は、それらを生かしてお客さまとのすべてのタッチポイントを統合し、オムニチャネル化を加速していきたいです。それぞれのツール自体は素晴らしいので、あとはどのように活用するかという発想と実際の活用次第だと思います。
ぐるっとデモ
ビッグデータを最大限に活用し、ビジネスに大きな効果を生み出すには、オートバックスセブンのように、データ処理や分析・マイニング、マーケティング管理、レポーティングを行う必要があり、さらにデータベースのセキュリティや監査機能も求められる。「ぐるっとデモ」は、IBMソフトウェアを中心に、日本情報通信のデータ分析領域での20年以上の経験に基づいた高い技術力によって、ビッグデータ・マーケティングを“ぐるっと”支援する推奨モデル。
http://www.niandc.co.jp/s/z_AB
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日本情報通信株式会社 ソリューション推進本部 ソリューション企画部
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