4月の増税を控え、多くの企業が価格戦略やプロモーションに頭を悩ませている。松田久一氏は「増税下だからこそ価格訴求ではなく、品質の訴求を」、「中長期的に価格差別化戦略で支払意思額を高めるべき」と指摘する。
売れ行き好調なプレミアム家電。(左上から時計回り)ホールフードマシン「バイタミックス」、ウェアラブルカメラ「GoPro HERO3+ブラックエディション」、扇風機「グリーンファン」、ロボット掃除機「ルンバ」。
満足の対価は人によって異なる
4月からの増税を控え、2月に入り企業からの増税対策に関する問い合わせが増えている。本来ならばもっと早く対策を打つべきだが、本格的に動き出したのはここ最近のこと。そうなると商品開発など相当の時間がかかる施策よりも、営業活動やプロモーションといった部分に目が向いてくる。
その意味では増税下における広告宣伝活動の役割が非常に注目されているわけだが、この先の消費税率10%導入といった将来を見据えるならば、「価格差別化戦略」にも目を向けることをお勧めしたい。
では、そもそも価格差別化戦略とは何なのか。一言で言えば、顧客の品質に対する対価意識の違いに着目して、複数の価格ラインを設定する政策である。価格とは、「提供されるサービス・商品に対して、消費者が自ら喜んで払ってくれる金額(支払意思額=Willingness to pay)」である。つまり、「得られる満足の対価」であり、個人によって大きく違う。この違いに着目して、品質志向の高い顧客層に高品質で高価格のものを、価格志向の層には必要十分の品質で低価格のものを提供することである。この政策が成功すれば企業の売上は増える。
そして「消費税が3%アップする」ということは、すなわち消費者からすれば「収入が3%下がる」ということとイコールでもある。その中で支払意思額をいかに最大化し、より多くの対価を得るかがマーケティングの基本的な考え方となる。