若い世代を中心に、消費者の「嫌消費」が言われる昨今。2014年、人々の心を動かし、マーケットを活性化させるためには何が必要なのでしょうか。現代消費者のインサイトの今とこれからを、変わりゆく消費者を見つめ続ける三者に分析・予測してもらいました。

(左から)光文社 『Mart』編集長 大給近憲、博報堂 執行役員 博報堂生活総合研究所 所長 嶋本達嗣、電通 マーケティング・デザイン・センター 電通総研 研究主幹 袖川芳之
大給▶ 『Mart』が創刊した2004年頃は、ライフスタイルを標榜することで、それをきっかけに雑誌が認知されていくというパターンがありました。ただ、すでにそうした「スタイルの発信」が古くなりつつあると感じていたので、Martではショップやモノといった、人と人とが結びつく「接点」を打ち出すべく、「コストコ」や「ダウニー」などを提案してきました。そうすると、予想以上に読者の反応が良いんです。ダウニーを本来の使用法である柔軟剤としではなく、薄めて床に撒き、芳香剤の代わりにして遊ぶ人たちが現われました。これは僕たちが仕掛けたのではなくて、読者自身が動かしていった結果でした。しかし最近では、そういうことが少なくなっている気がします。今の消費者は「新商品を投げれば飛びつく」ということはあまりなく、モノ選びに慎重。商品を起点にムーブメントが起こるという単純な図式では解釈できなくなっています。
嶋本▶ スタイルとは、いわゆる「型」「モデル」ですよね。今の生活者はモデルではなく「素材」を欲しがっている、遊びたがっていると感じます。たとえば「初音ミク」は、遊ぶ素材を世の中に投げかけたことで成功した事例の一つ。商品やコンテンツの供給側には、素材を「上手にいじらせてあげる」というスタンスが必要な時代になっていると思います。
大給▶ 二次創作を、どれだけ消費者に委ねられるかが大切ですね。ダウニーを薄めて床に撒くのも一つの二次創作です。「食べるラー油」も、使用法に「餃子『にも』」と書いてあるように、コンセプトがゆるいからこそ、餃子以外の用途を消費者が自由に考えられた。スペックを満たすだけでなく、その上に遊ぶ余白がある「遊びしろ」(注1)がある商品が結果的にヒットしています。