スマートフォンの普及やビッグデータ活用技術の進化を背景に、リサーチ業界にも大きな変化が訪れています。一方的に問いかけるだけのリサーチから、消費者と対話する「共創リサーチ」へ。業界を俯瞰する2人に、より広く・深くなるリサーチの未来を予測してもらいました。
(左から) トランスコスモス・アナリティクス 取締役副社長 萩原雅之、クロス・マーケティング リサーチプランニング部 部長 梅山貴彦
"わざわざ"から"日常の中"へリサーチのリアルタイム化
梅山▶ 近年、スマホからネットアンケートに回答する人が増えています。たとえば20代女性では15~20%がスマホからの回答です。手元にデバイスがあるのが当たり前の時代になり、回答してもらう時間・場所に制限がなくなりました。そこで2012年からクロス・マーケティングが実験的に始めたのが「ライフログ調査」(注1)」。回答者が何か行動した時に、その場でスマホから回答してもらいます。
萩原▶ これまではPCを立ち上げてわざわざ回答してもらわなければなりませんでしたが、今は日常の中にアンケートが入り込み(注2)、リアルタイムに情報収集できるようになりました。それに加えて、マウスではなく指でタッチできる点もメリットです。「指は最高のデバイス」という言葉もあるくらい、頭で考えたことがダイレクトに反映されます。スライダーやイラストの気になった箇所をタッチしてもらうことで、ヒートマップが作成できる技術も登場しました。各社、タッチパネルならではのこうした技術の開発に力を入れていますね。
梅山▶ リサーチのリアルタイム性が高まり、直感的な回答が可能になったことで、今まで気付かなかったユーザーの行動を発見できるようになりました。
萩原▶ 今後の課題は、質問票のデザインをどうスマホに最適化するか。世界的には、質問形式を変えたり、質問数を減らしたりするなどシンプル化する傾向にありますが、何年も継続的にデータを蓄積してきた企業が急に変更するのは難しい。PCベースの従来の調査と、スマホベースの新しい調査を並行して行っているのが現状です。インターフェイスの違いが調査結果にどう影響するか、各社、分析を進めています。とはいえ、今後スマホやタブレット端末を使ったリサーチが主流になるのは間違いありません。
予測と最適化だけではイノベーションは生まれない
萩原▶ デジタル上で行動すると、位置情報や購買データなど、あらゆる「デジタルフットプリント(足跡)」(注3)が残ります。企業は、アンケートを含む社内外のバラバラのデータを、一つの顧客IDでつなぎ、個人の行動傾向を明らかにしたいと考えています。そうすれば、予測や最適化の精度が格段に高まる。今、注目を集めている「シングルソース化(データインテグレーション)」(注4)ですね。