リアルとWEBとの間を行ったり来たりするユーザーの行動特性を捉えたO2Oビジネスへの注目が、近年ますます高まりつつあります。「WEBを見て何らかのモチベーションが喚起され、実店舗を訪れる」という行動はすでに人々の間で定着しており、グルメサイトはその最たる例と言えるでしょう。それにも関わらず、数々のO2O施策を見ていると、規模の小さなビジネスに留まってしまっているケースが少なくないように思います。その原因は、現状のO2O施策が、ユーザー側あるいは実店舗側に何らかの負担を強いるものが多いことにあるのではないでしょうか。たとえば、ユーザーにクーポンをダウンロードさせる、アプリをインストールさせる、チェックインさせる...。店舗に測定機器を導入させる、クーポンをチェックするオペレーションを追加する...。それが双方にとって、サービスを利用する上でのハードルになってしまい、利用が活性化されないのです。
WEB・リアルの顧客接点を統合し、顧客体験価値を向上させ、成果を得るためには、そうしたハードルをなくす発想が不可欠です。ユーザー側も店舗側も、従来の行動を変えることなくサービスを利用できる仕組みをつくることが必要なのです。
その考えに基づいて設計した施策の一つが、三井住友カードの会員向けサイト「ポイントUPモール」の新サービスとして10月1日にスタートした「お店でショッピング」です。ポイントUPモールとは、会員をオンラインショップに誘引してショッピングをしてもらい、通常よりも高い還元率でポイントを付与するというもの。モールからの送客先としてEC店舗に実店舗を追加したのが、今回新たにスタートしたサービスです。ユーザーは店舗一覧の中から行きたい店舗を選択し、「来店申請」を行う。あとは実際にお店に行ってクレジットカードで買い物をすれば、利用金額に応じたポイントが自動的に加算されます。利用にあたって必要なのは、会員向けインターネットサービス「Vpass(ブイパス)」にログインし、「来店申請」を行うだけ。ユーザー側も店舗側も、店頭では特別なアクションをする必要がなく、通常のショッピングとほぼ同じ行動のなかでサービスを利用できるのです。