これから生まれる新たな都市づくりに向けた動き、オリンピック開催に向けて盛り上がるポジティブなマインド...。この好機をどう活かすか? 独自の視座を持ち、コミュニケーションビジネスの最先端で活躍する実務家5人に招致決定直後のいま考える、未来に向けたアイデアを聞く。
前向きの消費マインドを企業に活かす。
バブル崩壊、デフレと日本経済が停滞する中、企業内では投資判断を下せない状況がありました。マーケティング領域も同様で、将来に希望の見えない状況下で、マーケターも新たな投資を社内で通すことができなくなっていました。
ところが東京でのオリンピック開催が決まり、日本経済の先行きに大きな光が灯った。これは投資に対する明確な理由ができたということ。企業のマーケティング投資が活性化し、新たなイノベーションが生まれるのではないかと期待しています。
また3兆円と言われる、オリンピックの経済効果は東京だけでなく地域を含めた日本全体の活性化につながると考えています。私は昨年から沖縄県のPR活動に関わっているので特に、大幅に増加することが確実な外国人観光客をいかに東京以外の地域に集客し、地域活性につなげていけるかにも関心を持っていますし、東京オリンピックを自治体や地域産業の活性化につなげていくアイデアが必要とされていると思います。
しかし3兆円の直接的な経済効果よりも、もっとも大きなインパクトは日本人のマインドの変化。消費とはマインドに大きく左右されるものですし、2020年に向けて皆がワクワクし、前向きになれる目標ができたことは直接的な経済効果の2倍、3倍もの効果を日本企業にもたらすのではないでしょうか。
1964年に東京オリンピックが開催された時も、招致が決まってから日本中がそこに向けて頑張ろうという機運が生まれたと思いますし、戦後の復興のひとつのシンボルとなって「もはや戦後ではない」という共有認識が日本人の間にできました。私はバブル世代なので「昨日より今日、今日より明日は必ずよくなる!」という確信を持って生きていますが、若い世代が「明日は今日よりきっとよくなる」という確信を持つのは初めての経験。社会全体のマインドが大きく変わることに期待を寄せています。
藤田康人氏(ふじた・やすと)
味の素を経て、ザイロフィンファーイースト社(現・ダニスコジャパン)の設立に参画。キシリトール・ブームを仕掛け、製品市場をゼロから2000億円規模へと成長させた。2007年、IMC(統合型マーケティング)プランニングを実践するマーケティングエージェンシー、インテグレートを設立。 |