これから生まれる新たな都市づくりに向けた動き、オリンピック開催に向けて盛り上がるポジティブなマインド...。この好機をどう活かすか? 独自の視座を持ち、コミュニケーションビジネスの最先端で活躍する実務家5人に招致決定直後のいま考える、未来に向けたアイデアを聞く。

それぞれが主役のオリンピック体験を提供。
2020年、ついにオリンピックがやってきます。招致の際には「東京開催には大義がない」とも言われましたが、実はそれこそがポイント。逆に、観る人、参加する人、それぞれが大義を見出し、世界中の人々みんなが「自分が主役」と思える体験を提供できるチャンスです。
これまで企業のスポーツ協賛とは、人々の注目を集める「メディア」としての価値を期待するものでした。しかし7年後には、スポーツをメディアとして捉える時代は終わっているでしょう。もはや、競技場やアスリートのゼッケンに企業のロゴを掲げただけでは、ブランドに対する人々からの支持は得られません。そうではなく、「オリンピックを楽しむファンたちに喜んでもらえること」をサポートすることで、人々の心にブランド価値を築いていくべきです。
ファンたちは、アスリートが素晴らしいパフォーマンスを発揮し、ベストな記録を刻むことを期待しています。その歴史的な瞬間に立ち会い、興奮と感動を共にすることを望んでいます。そして、可能であればそんなビッグイベントに自らも関与し、貢献したいと考えているでしょう。ならばブランドは、ファンたちのそんな想いをサポートするべきです。
7年後にはテクノロジーの進化で、今まで考えられなかったような施策も実現できるかもしれません。たとえば、近年注目が高まっているウェアラブル・デバイスなども一般化している可能性があります。公式カメラによる中継に捉われず、「グーグルグラス」などを活用して、現地で観戦するファンたち――彼らの視点をネット上に集めれば、それを観る人それぞれが、これまでとは全く違った自分だけのオリンピックを体験することができるでしょう。
アスリートとファンの距離を近づけたり、東京に足を運べなかったファンたちの声を現地に届けたり、何らかの参加を演出したり。みんなが「自分が主役」と思える唯一のオリンピック体験を、提供し、サポートしていく。2020年は、それこそ「お・も・て・な・し」の発想で、世界中の人々の心にブランド価値を築ける絶好のチャンスだと思います。
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京井良彦氏(きょうい・よしひこ)
大手銀行M&Aアドバイザーを経て電通入社。ソーシャルメディアやデジタル領域を中心とするプランニングを手掛ける。著書に『ロングエンゲージメント』などがある。 |