2020年の東京開催は、日本の企業にどんな可能性を与えるのだろうか。スポーツマーケティングが専門でオリンピックのマーケティング、企業のスポーツマーケティング活動にも精通する、早稲田大学の原田宗彦教授に現状で考えられる可能性について論考してもらった。
オリンピックの五輪マークは、世界で最もよく知られているブランドである。平均で94%の認知度を誇り、赤十字のレッドクロスやメルセデス・ベンツのスリーポインテッド・スターよりもよく知られている。このようなオリンピックが、2020年に東京に来ると決まったことは、世界第3位の経済大国であるにも関わらず、停滞感と閉塞感が拭えない今の日本にとって、未来に向けた新しい成長戦略を設計する千載一遇の好機である。
千年に一度偶然に訪れるという表現は大げさかもしれないが、オリンピックという世界最強ブランドと、今後7年間にわたってパートナーを組める権利を獲得したことは真の僥倖であり、東京という都市のブランド力の向上からスポーツ関連産業の活性化まで、産業界に幅広いプラスの影響をもたらす可能性が生まれた。
しかしながらその一方で、国際オリンピック委員会(IOC)が所有するオリンピック資産は厳格に保護されており、正式なスポンサー企業にならない限り、それらを使用することはできない。さらに開催国であるがゆえに、権利保護の縛りが強化されるという窮屈さも生じるなど、今後オリンピックに関与する企業は、IOCが定めるルールに従ったマーケティングを展開する必要がある。そこで以下では、「オリンピックと日本企業の活路」というテーマに基づき、オリンピックマーケティングとは何かについて概説するとともに、2020年に向けて、日本企業がどのような活路を見出すべきかについて論考したい。