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記者発表の内容は嘘だった!ネットユーザーの指摘で発覚の顛末

鶴野充茂(ビーンスター 代表取締役)

ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。

2016年9月、群馬県太田市は「パリで行われた格闘技ゲームの世界大会で、市の臨時職員が優勝」と記者発表し、朝日新聞と地元紙の上毛新聞が記事にした。しかし記事を見たネットユーザーの指摘で、ゲーム大会そのものが存在しないことが発覚した。

ゲーム大会で優勝したとされる男は仕事の評価も高く職場の評判も良かった。ある日、男は休暇の申請をし、周囲はゲーム大会参加のためと誤解した。本人も本当のことを言い出せなくなり、上司や同僚などともやりとりするFacebookでもアリバイ工作をして優勝したと伝えた。

喜んだ上司は、記者を集めて紹介した。彼を正規職員に登用できないかと考えており、それがいいきっかけになると考えたからだった。男は説明資料を持参し、ゲームのコントローラーを操作して見せたりしながら約1時間にわたって優勝の喜びなどを語る。その上司はかつて広報課の課長だった。

記者会見と言えば公式発表であり、それをメディアがそれぞれ精査した上で、報じるものというイメージがある。しかし今回、発表内容が真偽を確認されることなく報道され、また市役所という最も信頼性の高いと考えられている機関が、確認なしにウソ情報を流したということが起きた。

似た事件が起きている

実は最近、似た事件があった。小1の男児が心臓病のため渡米し、心臓移植を受けるという。11月、その男児の伯母が記者会見して募金を呼びかけた。それを産経新聞や読売新聞などが報じた。しかし翌日になってすべて嘘だと判明、両新聞が謝罪したというものだ。

こうした事件では、メディアのチェック機能を疑問視する声がまず上がり、次に、消費者としてのメディアリテラシーを高める必要性を訴える声が広がる。どちらも重要な指摘だが、広報の教訓としては、別のポイントに着目したい。それは、チェック機能としてのネットユーザーの力である。

ネットの『チェック力』活かせ

広報は今、ネットユーザーのチェック力を真剣に活かす体制を持つべきだ。2015年夏の東京五輪エンブレム炎上事件の際、エンブレムをデザインしたクリエイター監修のトートバックのデザインが、ネットで公開されている写真をそのまま使っていたことなどを指摘したのはネットだった。最近では、自分が撮った写真を読み込ませるとアニメ風の画像に加工されるスマホアプリが注目されたが、映画『君の名は。』の新海誠監督作品の背景画像を丸パクリしているとネットで指摘され、アプリ提供会社は謝罪し配信を停止した。

発表・注目されると、ネットユーザーによる精査が始まり、疑わしい点は徹底的に追及される。従来の広報では、発表しメディアに紹介されることで目的を達成したと捉えがちだったが、こうした反応を受けて組織内外に迅速なコミュニケーションをとれるかが、その後に大きな差を生んでいる。

どんな組織も完璧なチェック体制を持つことは不可能だ。そこで日ごろからネットの反響をモニタリングしてチェック機能として活かしていく方法をぜひ模索したい。関心がある人に情報を届け、反応を得て関係づくりを強化する。それが『パブリック・リレーションズ』の本来の役割であろう。

ビーンスター 代表取締役 鶴野充茂(つるの・みつしげ)

国連機関、ソニーなどでPRを経験し独立。米コロンビア大院(国際広報)卒。日本パブリックリレーションズ協会前理事。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書は35万部超のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。最新刊は『頭のいい一言「すぐ言える」コツ』(三笠書房)。
公式サイトは http://tsuruno.net

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