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2016年ヒット商品のPR

ネット発のヒット商品は可能か?マスPRやネットPRで話題にする方法

片岡英彦(東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業)

ネットを介したPRの成否は、商品のヒットにも影響するようになってきた。マスPR、ネットPRの特性を理解し、戦略の立て方を考える。

図1 ある中小企業がSNSアカウントを運営する際の話

2016年もPR戦略や施策が功を奏した結果、商品の売上アップにつながったという事例が散見された。以前に比べ、マーケティング活動におけるPR部門の重要性が高く評価されるようになってきたのではないだろうか。

かれこれ20年近く、PRを軸として「マーケティング×PR×メディア」の仕事を掘り下げて行ってきたが、私が社会人になりたてのころの「PR活動」とはずいぶん様変わりした。かつてのPR活動は、社長の会見や取材をセッティングし、新商品や決算情報のプレスリリースを書くなどの事務作業だと思われていた節がある。マスPRやネットPRの成功によりヒット商品が生まれ、PR部門の活躍が経営全体にも大きく影響するようになったという変化は喜ばしいことだと言えるだろう。

戦略なきまま任命される担当者

長い間PR部門は、外部メディアとの折衝を行う仕事がメインであった。しかし最近では自社サイトやSNSなどの公式アカウントを運営するケースも増えた。一方、こうした業務の多様化を戦略的に実施しているところは少ない。PRや広報の仕事に携わる人たちであれば一度は経験があるかもしれないが、図1のような例え話をよく聞く。あくまでこれは架空の例であるが、決して人ごとではないのだ。

この例え話が示していることは、いかに多くの企業がコミュニケーション戦略のないまま、「他社が実施している」というだけの理由で「新しいメディア」を運用開始するなどという、場当たり的なPR施策を実践して失敗しているかということだ。

気の毒なのは、戦略なきまま「若い」という理由だけで任命され、インタラクティブコミュニケーションの知識や経験もなく、また専門家からのアドバイスや仲間のサポート、プロジェクト予算もないまま、個人的な努力の範囲内で活動しなくてはならない担当者だ。

そして何よりも、企業やブランドとの「つながり」を求めて期待してしまった顧客(潜在顧客)にも迷惑がかかってしまう。最悪の場合、自社のイメージを毀損してしまうことにもなりかねない。一見、笑い話のようだが、実際には至るところで目にするケースだ。

結論を言うと、SNSのアカウントひとつであれテレビCMであれ、「PR戦略を立てる」という事前の企画段階でしっかりとした骨太の物語をつくっておかなければ本質的な成果には結びつかない。場合によっては、他部署や現場(店舗や工場、全国の支店)など全社的な協力を得る必要もある。プロジェクトとして年間を通じてPDCAを「回していく」ためのシフトを組んだり、「ネタづくり」のための企画班を社内につくったりする必要もある。

本気で「PR施策で商品を売りたい」と考えるのであれば、ある程度の経験のある人の時間と労力を使い、リアル店舗を設置するときやテレビCMを放映するときと同じくらいの覚悟で望まなければ、「売れる」ための仕組み(顧客との良好な接点)にはならない。この一見当たり前のことが、デジタル領域やPR関連の戦略においては認識されておらず、責任者はアイデアさえ集まれば簡単にできてしまうと勘違いしている節があるのだ。

手段(戦術)と目的(戦略)が逆転

PRでヒット商品を生み出すためには、どんな取り組みから始めたらいいのだろうか。私が普通のコンサルタントや企業内のマーケターであれば(あるいは大学での講義であれば)、ごく普通に環境分析(例えば3C分析やSWOT分析)などを用いて「課題発見」を行い、「ターゲット設定」「具体策立案」……と順当に進めることを提案するだろう。

もっとも、こうした「骨太の提案」をしたいのは山々だが、実際、私は広報・PR分野のバックグラウンドを持ち、広報部門が商品販売以外にも他の多くの業務を行っていることを知っている。マーケティング部門が商品開発や広告戦略を考えたりするのと同等か、それ以上のリードタイムと予算をPRプロジェクトに投入し ...

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