「長く安定した環境で働きたい」─そう志望する新卒学生が増えている。千葉銀行では早くから女性活躍推進に取り組んでおり、積極的に取り組みや実績を開示。地銀64行が連携した「地銀人材バンク」などもマスコミの注目を集めている。
9月5日、日経新聞朝刊地域総合面に「地銀の女性活用策、取引先に拡大」という記事が掲載された。2015年4月に全国の地銀64行のネットワークを活かし、転居などに伴う地銀出身者の再就職を支援する「地銀人材バンク」がスタートしたが、取引先の企業にも女性活躍推進の取り組みを広げていこうという動向について報じている。
地銀64行は2014年、「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」を設立した。その事務局を務める千葉銀行では「地銀人材バンク」をはじめ、自行のダイバーシティ推進の取り組みについて取材を受ける機会が増えている。「月に1~2回はインタビュー取材の依頼が入り、電話のみの問い合わせも多数あります。経済部だけでなく、生活報道部などからの取材も多いですね」と話すのは広報CSR部の幸田賢二氏だ。
元々、千葉銀行ではCSR活動の一環で地元の学校からの職場体験の受け入れや出張講義などを積極的に行ってきたが、最近は全国各地で開かれるシンポジウムなどに招かれるケースも増えてきている。例えば8月に秋田県で開催された「輝く女性を応援する秋田サミット」では、取締役執行役員が登壇している。
制度の先にある実態を発信
こうした動きは千葉銀行の新卒採用活動にも好影響を及ぼしている。特に、女性活躍推進に向けた職場環境づくりは学生に対する最大のアピール材料となっているのだ。実際に新卒採用活動では一般の会社説明会とは別に、女子学生向けのセミナーを開くようにしている。
「志望者の大半は千葉県の出身。アンケートで意見を聞くと、最近の女子学生は就職先で長く働ける環境やキャリアアップを求める意向が強い。最終的な決め手となることもあります。だからこそ説明会や採用サイト、入行案内でも女性行員のロールモデルを示すようにしています」と人材育成部採用担当の岡宅泰氏は説明する。
その背景には、行内の横断的組織である「ダイバーシティ推進委員会」、実行部隊としての「ダイバーシティ推進部」、そして人材育成部による組織間の密な連携がある。
同時に、広報CSR部もダイバーシティ推進の活動について行内外へ発信する役割を担う。同部では対外広報やCSR活動、広告宣伝のほか、インナーコミュニケーションとして行内報「ちばぎん」とビデオニュース「CVCニュース」を制作している。
幸田氏によれば、ダイバーシティ推進に関する取り組みや実績についてはこれまで様々なチャネルで積極的に広報活動を行っているそうだ。「女性管理職登用の数値目標、女性活躍推進法に基づく行動計画などはプレスリリースで発信しているほか、ホームページでも自行の取り組みを紹介。マスコミ取材にも積極的に対応しています」といい、例えば千葉銀行のホームページでは「2016年7月時点の女性管理職は92人、比率9.0%。2020年度までに女性比率20%へ」「2015年度育休取得者155人、うち男性は69人(61.6%)」といったデータと推移が事細かに記されている。
業務改善へ1300件の社内意見
千葉銀行の歴史をさかのぼると、1986年に銀行業界で全国初の女性支店長が誕生。2005年には「女性いきいきキャリアアップ宣言」の策定など早い時期から女性が活躍できる環境を整えてきただけに、働き方の見直しに対する行員の意識も高い。例えば2013年に「業務効率化及び早帰り推進委員会」を設置し行内から業務改善の意見を募ったところ、1300件を超える提言が集まったほどだ。さらに広報CSR部ではビデオニュースや行内報で女性行員のロールモデル、時間外労働削減に成功した支店の好事例などを取り上げ、行員への周知をサポートしてきた。
このような数々の取り組みは、千葉銀行のトップである佐久間英利頭取の考えによるところが大きい。教員の妻を持ち、長く共働きを続けてきたという頭取自身の経験があるからこそ、全行あげてダイバーシティを推進する体制をつくりあげた。
「もちろん採用活動のなかで女性の活躍や働きやすい環境ばかりを強調しすぎると、男性行員はどうなの?という声も聞こえてくる。ただ最終的には一連の取り組みを通じて、『女性が働きやすい環境は結果的に男性も働きやすくなる』と実感しています。性別に関係なく業務効率化によって時間外労働を減らし、早帰りが浸透すれば育児に参加しやすい環境づくりにもつながる」と、自らも育児休業を取得した経験のある岡宅氏は言う。
前述した「地銀人材バンク」も2016年8月末時点で103件の申請があり、7割弱は成約に至った。千葉銀行でも地銀人材バンクを活用して中途採用に至った女性が活躍している。広報CSR部では、これからも人材育成部やダイバーシティ推進部などと連携して、自行や地銀業界のダイバーシティ推進に関する取り組みを積極的に発信していきたい考えだ。