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PRになぜクリエイティブが必要か

「惜しい!」企業発コンテンツを「欲しい!」に変える7つの方程式

岡本純子(コミュニケーションストラテジスト)

スルガ銀行の「温泉部長」が情報発信するオウンドメディアが注目を集めている。特定の社員個人がストーリーテラーとして機能するためのポイントとは。

井伊部長の温泉グルメ探訪
http://onsen.surugabank.co.jp/
目的 地元の財産である温泉を紹介し、観光客をプロモートする
公開範囲 一般公開
月間PV数 非公開
スタート年 2013年2月
更新頻度 1~2本/週
主担当 寺田聡氏(カスタマーサポート本部)

スルガ銀行のオウンドメディアである「井伊部長の温泉グルメ探訪」。「温泉部長」井伊湯種こと寺田聡氏はスルガ銀行の部長だ。地元の静岡県や神奈川県の一部にある温泉宿やレストランの情報を毎週1~2本ほど公開している。

メディア環境が大きく変容する中、情報発信の形を秒速で進化させている欧米企業。それに比べて日本企業はまだまだ保守的な印象が強いが、ユニークな情報発信スタイルで社会とのエンゲージメントづくりに乗り出す企業も少しずつ出てきている。今回は欧米企業の先進事例に劣らぬ斬新な手法に、大胆な姿勢で挑むスルガ銀行の取り組みから、ソーシャル時代の新しいPRにおける「勝利の方程式」を読み取ってみよう。

銀行の部長による温泉レポート

今回の話の主役はスルガ銀行の「温泉部長」井伊湯種(いいゆだね)さんこと、寺田聡氏だ。同社の首都圏のオフィスでれっきとした部長を務めるアラフィフサラリーマンの寺田氏の活躍は「井伊部長の温泉グルメ探訪」というサイトで見ることができる。静岡・神奈川を地盤とする地方銀行、スルガ銀行の公式サイトの一部で、地元の静岡県と箱根など神奈川県の一部の温泉宿やレストランの情報を「温泉部長」自らが取材し、紹介するという趣向の楽しい内容だ。

温泉が大好きな筆者は6月初旬、箱根でこのサイトのための取材をするという部長に密着取材をさせていただくことにした。取材の合間に筆者もお湯のお相伴にあずかり、頼まれれば「由美かおる」のごとく(ピンとこない若い読者の皆さんは周りの先輩方に聞いてみてください)、サイトに登場したり……などと妄想を膨らませつつ、いざ待ち合わせ場所へ。箱根の温泉宿の浴場に赴いた筆者の前に登場したのは、いきなりほぼ、すっ○ん○んの温泉部長。

面を食らう筆者を横目に、部長は浴場内の湯船を出たり入ったり、と慌ただしい。このサイトは、部長が実際に入って、見て、浸かって、味わった温泉の良さを素の言葉でレポートするというスタイルをとっており、部長の目を通した率直な感想が何よりの魅力だ。

取材は2カ月から3カ月に一回、基本1泊2日でまとめて、10~12軒の温 泉宿やレストランを回る。カメラマンやライター、スルガ銀行のスタッフに 時々、部長のお湯友だちである「湯友」 などが加わって、総勢5~6人で朝から晩までぶっ通しで取材を続ける。湯船ごとに写真を撮り、次から次へと浴槽を回り、一軒につき1時間~1時間半ほどかけて取材した上で、次のお宿へ。ということで、サイトではゆったりお湯を楽しんでいるように見える部長だが、実はかなりの急ぎ足。取材は外観から客室に至るまで細部にわたり、隅々の雰囲気が分かる鮮明な写真や独自のサービスなど、宿の魅力をあますことなく伝えている。

軽妙な語り口の記事は読みやすく、静岡・神奈川の温泉約170カ所が網羅された一大温泉情報サイトになっている。読む人が行きたい温泉を見つけられるように …

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