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人気メディアの現場から

記者が業績を独自予想、80年続く投資家のバイブル

東洋経済新報社『会社四季報』

報道対応を担当するPRパーソンにとって、気になるのがメディアの裏側。企業取材のスタンスや、プロデューサーや編集長の考えに迫ります。

    記者が業績を独自予想80年続く投資家のバイブル

    【基本情報】
    部数 約50万部発行
    発行 年4回
    創刊 1936年
    編集体制 編集部は8人。ほか、記者約120人が全上場企業3600社強を分担して取材・執筆する。

    市場が反応したと見られる銘柄

    (1)2335 キューブシステム(春号)

    (2)2307 クロスキャット(夏号)

    (3)2488 日本サード・パーティ(夏号)

    特徴ある見出し(春号・夏号)

    (1)4345 シーティーエス【三匹目のどじょう】

    (2)9044 南海電気鉄道【真田丸】

    (3)4666 パーク24【目を見てノー】

全上場企業の財務情報などのデータを網羅し、「投資家のバイブル」とも称される『会社四季報』。6月発売の夏号では創刊80周年を記念し、創刊号のビジュアルを表紙に掲載。巻頭企画では、「月別予想配当利回りが高い会社」「株主優待と併せた実質利回りが高い会社」など9つの切り口で上位銘柄のランキングを掲載し、巻末には、「シェア首位企業を探せ!」と題した80周年記念特集を組んだ。

「特集は、その時々にマーケットで注目されるものを取り上げています。また、当誌の肝の一つであるランキングも、株主資本利益率(ROE)など公表資料から入手できるものもあれば、全社にアンケートを実施し、ここから独自のデータを掲載しているのもあります」と編集長の石川正樹氏は話す。

フォーマット化された各社9行のコンパクトな解説記事と、本社住所などの基本情報や財務、業績、株価などのデータから構成される全3600社強の各ページは、おかずの品数が豊富で栄養バランスも良い幕の内弁当によく例えられるという。「確かめたわけではありませんが、以前、証券会社の方から世界のマーケットでも全上場企業の情報が一冊にまとまっているのは四季報だけだと伺ったことがあります」と石川氏は笑顔を見せる。

読者は主に個人投資家のほか、上場企業の社員から就職活動中の学生まで幅広く、「投資」以外の目的で購入する人も目立つ。「ライバル企業や取引先の動向や、前株・後株といった正式名称の確認、企業研究や営業開拓など上場企業の辞典としてご活用いただいているケースも多い」と説明する。

さらに同誌では、1998年からCD-ROM版を販売。2013年に『会社四季報オンライン』を新装し、会員制をスタートするなどデジタル化も進む。「データが非常に多いので電子媒体となじみやすく、キーワードで瞬時に検索できるのは大きなメリット。一方で本の四季報には、誌面だけのオリジナルマークが2つあります。会社計画より記者予想が強気な会社は笑顔の“ニコちゃんマーク”、今号計画が前号予想より強気な会社は、“上向き矢印”が欄外についています」。

株式市場の動向は、記事の「見出し」にも顕著に現れる。一時期は本文でも頻出していた「中国」が急減。「インバウンド」「訪日」「五輪」なども減少傾向にある。「現在増加中のキーワードは、人工知能やIoT、自動運転など。当誌には、ミクロのデータを積み上げてマクロ経済を見る面白みがあります。今後もマーケットを反映した雑誌をつくっていきたい」と意気込む。

記者の独自予想が売り

編集部は、編集長を入れて8人。このほか、全3600社強の上場企業を約120人の業界担当記者がカバーする。「当誌の最大の長所は、記者が独自に企業業績や配当を予想していることです。毎年4回の取材で、企業を定点観測している記者は、企業の個性や業界の特性など様々な情報が読み取れるようになります。ですから企業の発表情報のみにとらわれず、個別取材や独自の分析に基づき、価値評価を行うことができるのです」。

上場企業の多くは、自社の今期の業績計画を公表しているが、その姿勢は保守的なものから楽観的なものまで千差万別だ。そこで記者は、業界他社からの情報や企業の癖を分析し、独自取材に基づき業績予想を作成する。全上場企業の7割を占める、3月期決算企業の前期本決算を取り込んだ6月発売号では、3620社のうち、およそ3分の1の1255社が記者予想と各社の予想に隔たりが見られた。

「取材で明快に答えが聞けることもないことはありませんが、ニュアンスで伝えられることが多々あります。そういったことからも独自予想をする上では、分析力や取材力がものをいいます。企業が公表するものと異なる数字を出すことはとてもスリリングで、記者としても腕の見せどころです」。

石川氏は入社した1990年の8月から同誌の記者となり、この6月の夏号で104号目を迎えた。「他の編集部に属している記者であっても、大半が担当企業を持ち当誌に携わっています。制作期間になると、お祭りといってはなんですが、みんなで頑張ろうという一体感が社内に生まれます」。

記者による独自の業績予想など、上場企業の情報がコンパクトにまとめられていることから「幕の内弁当」に例えられることも。

生の声を聞くセミナーを開催

年4回の発売日当日には、読者向けの無料セミナーを開催するのが同社の慣例だ。講師も務める石川氏によると ...

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