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広報担当者のためのマーケティング発想入門

近いようで遠い?遠いようで近い?マーケティングと広報の関係

片岡英彦(東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業)

いま、広報担当者にマーケティングの視点が求められています。ではマーケティングPRと企業広報とは、一体何が違うのでしょうか?

古くから企業広報活動は「マスメディアに自社に関する良い情報を取り上げてもらい多くの人にお伝えすること」を業務の中核としてきた。いわゆる「(フリー)パブリシティ」を中心とした活動だ。一方マーケティング(広告)は、商品の販売促進を目的とした広告枠購入と広告(クリエイティブ)の制作が業務の中心で、主に「純広告」を扱ってきた。

他の部門の人からは「一見似たような仕事をしているが、あまり相互に連携や協力をしていない」ようにみられることもあっただろう。

MPRという「ややこしい」仕事

近年、企業のコミュニケーション活動に大きな変化が起きた(図1)。自社サイトやブログ、SNSなど、ネット媒体を活用することが一般的となった。10年ほど前からは「マーケティングPR」という概念が定着した。自社サイト(オウンドメディア)を使った企業広報や商品販促キャンペーンの実施、外部ネットメディアとの提携や連携の強化、SNSでの自社アカウントの活用など、これまでの組織では「企業広報」「マーケティング(広告)」のどちらの部門にも属さない(あるいはどちらにも属する)新しいコミュニケーション方法が実施されるようになった。以来、多くの企業の中でとても「ややこしい」状況が続いている。

図1 マス・マーケティング受難の時代?

私は旧来の「広報部」「マーケティング(広告出稿)部」そして「マーケティングPR」という新規部門のいずれの経験もあり、各部門のリーダーやスタッフがどのような思考でコミュニケーションを考えるのかおおよそ見当がつく。他部門の人たちにも理解してもらえるように整理したいと思う。

「広報部」はこう考える

まず「企業広報」の仕事を長くしている人は「お金を払って露出枠を獲得」する「メディアバイイング(広告枠)」に抵抗感を感じる場合が多い。これは「フリーパブリシティ(客観記事)こそ価値がある」と考えているからだ。記事は掲載していただくもの、取材していただくものと考える。記事の内容は良く書かれても悪く書かれても究極的には自分たちでは「コントロールできない」という考えがベースにある(図2)。

図2 旧来型の企業広報の仕事の流れ

また、「企業広報」担当者の多くは「商品を販売すること」だけが広報の目的ではないとの自負が強い。企業広報の活動となる対象は消費者だけではない。関連企業、株主、従業員、地域住民、そのほか自社を取り巻く社会全体(ステークホルダー)との総合的なコミュニケーションを重視する。もっとも、こうしたことは実に「正論」であって誰も否定できない。

一方で、広報部はとかくこの「正論」を正面から他部署相手に振りかざしてしまうことがある …

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