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本田哲也のGlobal Topics

グローバルPR会社のアジア統括責任者に聞いた 「2016年、アジアのPRはどうなる?」

本田哲也

フライシュマン・ヒラードのリンアン・デイビス氏。2016年、アジアのPRには3つの「R」がポイントであると説いた。

2016年も明けて早1カ月。広報・PRに従事する皆さんは、とっくにバタバタな日々を送られていることでしょう。今年もこのコラムをよろしくお願いします!さて今回は、日本を含むアジアの2016年のPRをどう見るか、今年70周年を迎える世界トップ3のPRグループ、フライシュマン・ヒラードのリンアン・デイビス女史のインタビューをお届けしよう。デイビス女史は同グループのアジア太平洋地域のプレジデントであり、昨年のカンヌライオンズのPR部門の審査委員長でもある。

「2015年は、世界のPR業界にとってはひとつの節目となる年でした。新しい時代のPRの姿がようやく形を見せつつあると思います。社会変革から消費者行動まで何らかの『変化』を促す、統合された手段としてのPRです」。海外ではすでに、従来のメディアリレーションズの枠を超え、映像製作やペイドメディアもひとつのPRキャンペーンに統合させる流れが主流になりつつある。

「2016年もこの流れは当然続くでしょう。いくら新しいテクノロジーやツールが登場しても、PRパーソンの仕事は、それらを使っていかに『説得性のある会話』を社会に生み出すかです。ちょうど話題の映画『TheMartian(邦題:オデッセイ)』を観終わったところなのですが、主人公の宇宙飛行士は機知と科学とクリエイティビティ、この3つを駆使して生き残ろうとします。これは広報・PRにもそのまま当てはまると思いませんか(笑)? 成長が続くアジア地域は特に、リスクを恐れない『実験マインド』のようなものが大切だと思います」。─より具体的には、どのような点がポイントになっていくのだろうか。

「3つの『R』を挙げましょう。レレバンス(生活者との関連性)、リ・インベンション(再設計)、レピュテーション(評判)です。多様なアジアでは、ブランドや企業のレレバンスをどうつくるかが大命題。またいくつかの地域では、生活習慣や価値観そのものをリ・インベンションする必要もあります。危機管理においては、レピュテーションをいかに“ツイートスピード”の中で守り抜くか。新時代のスピード感が求められるでしょう」。

成長の続くアジア。デイビス女史の注目する国やエリアはどこなのか。「日本ですね!日本の皆さんだから言っているわけじゃないですよ(笑)。私は今後のPRに最も重要なエッセンスはクリエイティビティだと信じていますが、日本には世界に類を見ない、ちょっと癖のある独創性があります。例えばEmoji(絵文字)はコミュニケーションの大発明ですね。そういった意味で、日本はPRクリエイティブをリードできるはずです。課題はそれをどうやって、これまでの工業製品やコンテンツのように世界に『輸出』するかでしょうね」。2016年も広報・PRの進化が楽しみです。ではまた来月!

本田哲也(ほんだ・てつや)

ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー/戦略PRプランナー。主な著書に『最新 戦略PR 入門編/実践編』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)、共著に『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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