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米大手小売チェーンが炎上、直後に出現した偽アカウントは敵か?味方か?

鶴野充茂(ビーンスター 代表取締役)

ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。

偽アカウントは敵か味方か?
今年8月、米大手小売チェーンのターゲットがおもちゃなどで男の子用/女の子用という表記を外すと発表。これに対し同社のSNSには非難の声が殺到し、偽ヘルプデスクアカウントも出現。辛辣な物言いで注目を集めた。

現れたのは助っ人かそれとも?

男の子がバービー人形で遊んでもいいじゃない─。遊ぶおもちゃは性別で限定されるものではないとの考えから、男の子用・女の子用という表示をやめることにしたターゲット。その動きに同社のFacebookページでは「もう買わない」「激怒している」といった批判が殺到、炎上状態になった。

この様子を見ていたある人物が、ターゲットのロゴをアイコンに使い、同社のサポートデスクに見える偽のアカウントを作成、一つひとつの批判コメントに返答を始めた。「残念ながら良い表現がないので率直にいいます。あんたバカだよ」「ウォルマートで買われるとのこと。彼らの売る自転車はシートが別売りのこともありますからご注意を」「あなたは普段からターゲットで買物をしていないようにお見受けします。なので大事なビジネスを失った、とはならないでしょう」……。挑発的な物言いで、明らかに平均的な公式アカウントによるものとは違っていた。

偽アカウントの正体

企業側としてはスタンスの取り方に苦慮したに違いない。口調(トーン&マナー)はふさわしいものとは言えないが、決して敵とは言えない。内容からはむしろロイヤリティの高い利用客だと分かる。対応次第では、アンチをさらに刺激するばかりか、ファンをも落胆させる危険性がある。

何者がアカウントを運用しているのかは時を待たずしてメディアが報じた。本人のインタビューコメント付きだった。曰く、自分はターゲットの味方で発表を支持。ただそれよりも風刺的なユーモアが好きで、笑いを生みたかった。ターゲットには頭のいい連中がいて、こんな事態も想定してきちんと対応できるはずだという読みもあった、と。騒動の中、ターゲットは「この人物は明らかに我々ターゲットの立場で対応しているわけではありません」と声明を発表した。やけにドライな反応だとメディアは報じた。

日ごろの関係作りがあってこそ

炎上時にこうした非公認の代弁者が現れたのも、ターゲットが日ごろからネット上の発信に力を入れてきたからこそだ。積極的な双方向のやりとりによって、ある種のコミュニティ意識が育まれていたこともあるのだろう。

同社は公式の声明を出す一方で、Facebookページではウイットを効かせた投稿をした。トロール(いたずら好きな妖精、ネット上で否定的な書き込みをする人物の意味もある)人形の写真を使い、暗に歓迎しているメッセージを込めたのだ。その表現のうまさに「ターゲット最高」などのコメントがあふれた。今後、日本でもネット上で双方向のコミュニケーションにシフトしていく動きは増えるだろう。その際にぜひ参考にしたい事例である。

ビーンスター 代表取締役 鶴野充茂(つるの・みつしげ)

国連機関、ソニーなどでPRを経験し独立。日本パブリックリレーションズ協会理事。中小企業から国会まで幅広くPRとソーシャルメディア活用の仕組みづくりに取り組む。著書は『エライ人の失敗と人気の動画で学ぶ頭のいい伝え方』(日経BP社)ほか30万部超のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。
公式サイトは http://tsuruno.net

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