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米国PRのパラダイムシフト

日米PR業界を徹底比較 広報は経営のドライバーになりえるか?

岡本純子(コミュニケーションストラテジスト)

読売新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏による米国からのレポート。現地取材により、PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。今回は日米のPRに対する認識の違いや温度差について徹底検証します。

どう違う?PRの常識・非常識

1年弱のアメリカでのコミュニケーション研究を終え、このほど帰国しました!今後は日本からグローバルPRの最新情報などをレポートしていきたいと考えていますが、今回はアメリカ生活の「卒業論文」ということで、「徹底比較。米国と日本のPRはここが違う‼」と題して、アメリカのPR業界の最新事情と日本との相違点などを徹底的に掘り下げてみたいと思います。

帰国してひと月ほどの間、多くの広報関係者の方々とお話しする機会に恵まれたが、正直、日米の「PRに対する認識の違いと温度差」に少々、時差ボケ状態に陥っている。というより、「タイムマシンに乗って未来に行って、また過去に戻ってきた」感覚かもしれない。

どちらがいいとか悪いとか、というものではない。ソーシャルメディアの台頭で、PRの常識が大きくひっくり返ったアメリカに比べ、日本の変化はまだゆるく、「大波はこれから」という印象だ。日米でかなり、差が開いた感のある「PRの常識・非常識」。ここからはQ&Aスタイルで日米PR業界を俯瞰してみよう。

Q そもそもPRって? 
A 日米で定義に大きな違いはない。「組織と社会の相互互恵的な関係性構築のためのコミュニケーション」

アメリカでもPR(パブリックリレーションズ)の定義は諸説あり、広告や宣伝・マーケティングと混同されることも多い。アメリカ最大のPR業界団体PRSA(アメリカPR協会)が1982年に定めたPRの定義では、「PRとは組織と社会が相互に適応することを促進するもの」という若干分かりにくいものだった。30年を経て、時代にそぐわないという声が出てきたため、2012年、新たな定義を公募し、選ばれたのが、“Public relations is a strategic communication process that builds mutually beneficial relationships between organizations and their publics.”というもの。

訳せば、「PRとは組織とそれを取り巻く社会の間に相互互恵的な関係を築くための戦略的コミュニケーションプロセス」となる。ちなみに日本の業界団体PRSJ(日本パブリックリレーションズ協会)のウェブサイトでは、「組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団・社会)との望ましい関係をつくり出すための考え方および行動のあり方」と紹介されている。日米どちらもPRを広義に、同義的に捉えられているようだ。

特に、ソーシャルメディアの登場で、情報を企業や組織がマスメディアなどを通じて一方的に発信する形から、ソーシャルを通じて、「対話」をすることに重きが置かれるようになっており、「相互の」コミュニケーションという意味合いが強まっている。

Q PRの産業規模、構造は? 
A PRの就業人口は約23万人。今や1兆円を超える巨大産業

アメリカはPR大国。日本とは桁違いにその産業規模は大きい。PRの就業人口は何と約23万人。2022年までにさらに12%増えると予想されている(図1-1、1-2)。産業規模としてはここ10年で倍増し、今では1兆円を超える巨大産業だ。

Holmes Reportの「World PR Report 2015」によると、グローバルで、PR業界は2013年から2014年にかけて、7%成長した。マスメディアの衰退とともに …

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