フジテレビ系列で7月からスタートした、水曜10時の連続ドラマ『リスクの神様』。大手商社とそのグループ企業を舞台に毎回、様々な危機が巻き起こる社会派ドラマだ。広報担当者としては、危機対応のケーススタディとしても参考にしたいところ。今回はプロデューサーや出演者へのインタビューとともに、ドラマの見どころをお届けします。
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危機管理の教訓に満ちた演出
企業の危機管理やメディア対応など、広報関連の仕事に携わる読者にとって決して他人事とは思えないケーススタディの宝庫─それがドラマ『リスクの神様』だ。ドラマの舞台となるのは大手商社・サンライズ物産。新事業における製品欠陥とリコール、グループの食品会社での異物混入事件、政界を巻き込んでのスキャンダルなど、新たな危機が毎回のように訪れる。
実際、過去に発生した企業の不祥事を彷彿とさせるエピソードも盛り込まれているが、もちろんストーリーはフィクションである。ドラマの監修は『広報会議』誌面でもおなじみ、危機管理コンサルタントの白井邦芳氏。記者会見の作法や小道具の選び方など細部にわたるリアリティへのこだわりを感じさせる。
同時に、「企業が陥りがちな初期対応のミス」「記者会見の失態がメディアに編集されるとこうなる」といった教訓に満ちた演出も見どころだ。いわば、リスクマネジメントの指南本を映像で見ているかのようである。
『リスクの神様』が取り上げるテーマ
製品欠陥(第一話)
華々しく立ち上がった新事業のもと発売された、個人家庭向け自走式掃除機において発火事故が発生。神狩かおり(戸田恵梨香)は「1万回ものテストを重ねた、完璧な製品」と主張するも、テスト結果に偽りがあったと発覚する。
異物混入(第二話)
傘下の食品会社が製造するカップマカロニにネジが混入。ネット告発により炎上し、安全確認の電話対応や取引停止などの事態に見舞われる。危機対策室の調査で、社の体制に反発する従業員による仕業であると突き止める。
スキャンダル(第三話)
社が所有するクルーザーによる事故が発生。乗船していたのは次期総裁と目される代議士と謎の女性だった。さらに同時期に、企業広告に起用していた女性アイドルの不適切な異性関係への疑い、脅迫事件も絡む展開に。
毎回登場する謝罪会見のシーン
ストーリーはサンライズ物産に新たに「危機対策室」が設置され、リスク対応のスペシャリストとして危機対策室長に着任した西行寺智(堤真一)が登場するところから始まる。西行寺は米国の企業や政府機関の危機管理に携わってきたプロフェッショナルという触れ込みだ。
第一話では新事業で製品欠陥の問題が発生。その矢面に立つのは、東大卒のエリート女性社員・神狩かおり(戸田恵梨香)だ。神狩かおりは新会社の役員として華々しい製品プレゼンテーションを披露するも、ドラマの後半では一転、製品発火事故の報告が相次ぎ、リコール対応を招く事態へと発展する。莫大な予算を投じた新事業の失敗の責任を負わされたかおりは解雇こそ免れたものの、マスコミを前に謝罪会見に立ち、本社危機対策室への異動を命ぜられる。
第二話は「食品への異物混入」。西行寺と神狩かおりは、同社傘下の食品会社「豊川フーズ」で発生した、カップマカロニへの異物混入事件に対処することに。混入したネジにより口の中を切る被害者まで出たにもかかわらず、豊川フーズ社長の天野昭雄(飯田基祐)は「愉快犯の犯行」と決め付け、消費者対応は後手に回っていく。
こうした対応にネットは大炎上、同社商品の不買運動まで巻き起こる。火消しを図ろうと、総務部長の麻生次郎(岡本信人)が謝罪会見を行うものの、社長の不在や会見中、記者に挑発された麻生の感情的な態度により、かえって世間の反感を買ってしまう。
白井氏の解説コラムも更新中
ドラマは本誌発売時点で第三話まで放映済み。番組公式サイトに「このドラマはリスクマネジメントを題材に、危機に直面した会社や、そこにまつわる人々の人間模様を描くことを目的としている」と明示されているとおり、企業の論理や組織と個人の思惑、主要な登場人物の人生、家族との関係などが少しずつ明らかになっている。
なおドラマの放送期間中、宣伝会議が運営するニュースサイト「アドタイ」にて、監修の白井邦芳氏によるコラムを更新中。ドラマのストーリーに沿って、危機対応に関する解説を盛り込んでいる(ドラマ放映の翌日・毎週木曜日に更新)。