3月17日に浜離宮ガーデンカンファレンスにて開催された「ヤングカンヌ」日本代表選考を前にしたイベントの様子。日本選考審査員と昨年の代表チームが登壇し、200人が勉強のために訪れた。
広報会議10周年おめでとうございます!この10年、日本におけるPRや広報も理解が進み、その役割もずいぶんと変わった。まだまだ世界レベルの壁は厚いけれど、これからの10年、日本の若手PRパーソンには大きな可能性とチャンスがある。というわけで、今回は世界の登竜門である、カンヌの「ヤングライオンズコンペティション(通称ヤングカンヌ)」について。日本代表選考を前にしたイベントの様子をレポートしよう。
ヤングカンヌは、28歳以下の2人で各国代表チームを組んで、カンヌ現地で与えられた課題に24時間内で企画提出するというもの。PR部門は昨年から新設され、なんといきなり日本代表チームがゴールドという快挙を成し遂げた。3月17日に開催された初の勉強会イベントでは、日本選考審査員と昨年の代表チームが登壇。200人が集まり関心の高さを見せた。
冒頭に、審査委員長の博報堂ケトル・嶋浩一郎氏が、「PR部門は、カンヌ全カテゴリーの中で最もエントリーが伸びている、いわばもっとも“旬な”部門」と強調。2009年に設立されたPR部門はまだ6年しか経っていないが、2013年に1296件だったエントリーは2014年に1850件と急増。伸び率は実に43%で、サイバー部門の39%も凌ぐ勢い。続いて嶋氏は、「PR部門の評価基準は、大きくいって2つだけ。『何を変えたのか?』と『どんなアイデアで変えたのか?』だけ」と話を進めた。PRの成果というと、まだまだ日本では「露出量」、つまりどれだけメディアに取り上げられたか?という話になりがち。しかし、「パブリシティだけ」はむしろカンヌではバカにされる。なぜなら、「ニュースにすること」は、PRパーソンにとっては「歯磨きすること」くらい当たり前のことだから。重要なのは、そのPRによって起こったパーセプションチェンジやビヘイビアチェンジの「変化の大きさ」であり、またその変化を起こしたアイデアがどれだけ革新的かということなのだ。
後半は、昨年ゴールドを獲得したアサツー ディ・ケイ(当時)の梅田哲矢氏と岡田雄一郎氏のトーク。昨年のお題はUNODC(国連薬物犯罪事務所)からの「国際的な人身売買問題の啓発とドネーション促進」。優勝チームは、生まれたばかりの赤ちゃんに「90ドル(世界の人身売買の平均価格)」のタグがついており、それが啓発のきっかけになるという斬新なアイデアだった。「ブリーフの一部はあえてスルーしてもいい」「早い段階で2案考える」「身近なイシューは大きく、大きなイシューは身近に、発想のスケールを変える」など、ベテラン顔負けのポイントが続出。会場は熱心に聴き入っていた。4月前半には日本代表が決まる。「二冠」を目指してがんばってほしい。ではまた来月!
本田哲也(ほんだ・てつや)ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー/戦略PRプランナー。主な著書に『最新 戦略PR 入門編/実践編』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)、共著に『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。 |