この10年、現場で挑戦を続けてきた35人の実務家の皆さんが考える広報の仕事の醍醐味とは? 企業はもちろん、自治体や大学まで、あらゆる場面で広報の力を実感したというエピソードも満載です。未来への提言、読者へのメッセージもいただきました。
日本旅行 広報室 室長 矢嶋敏朗(やじま・としろう)1987年入社、営業・新規事業・広告会社出向などを経て2000年より2度目の広報担当。人材育成をライフワークとし、業界団体の人材育成や観光大学の非常勤講師も勤める。父親が元論説委員で、マスコミと広報両方の気持ちを理解、テレビ出演を得意技とし出演300回超。 |
Q1:広報の仕事における「座右の銘」/その理由を教えてください。
A1:サービス業は日本のGDPの約7割を占める。旅行関連産業をはじめ、サービス業従事者が今後の日本を元気にする。/マスコミ登場回数など社会的評価は、重厚長大産業がまだ高い。記者も、サービス業は日本の基幹産業とは真面目には考えていない。しかし、話題の地域創生や2020年東京オリンピック・パラリンピックもサービス業が主役にならないと、日本の質的発展はない。
Q2:これまでのキャリアのなかで、最も広報の力を実感したエピソード、仕事の醍醐味や面白さ、やりがいを感じた経験を教えてください。
A2:1995年に実施した「日本一周バスの旅」の企画、運営、広報対応。地道に働く乗務員のステータスアップやバスハードのレベルアップの必要性をアピールしたく、新車開発会議に参加した、いすゞ自動車新型バス発売時に1億円の豪華バスを製造してもらい、1カ月112万円のツアーを企画。内容を発表すると、全国紙全紙掲載など取材が殺到、ツアーは19分で完売。ツアー中は、テレビ番組の密着や、各地の現地メディアの取材も多数。STV『どさんこワイド』は、バスごと生出演。取材対応と称し、私も日本一周。一生忘れない夢のような1カ月でした。
Q3:この先10年の間に、広報の仕事に求められるスキルを教えてください。(3つまで)
A3:(1)広報マインド(2)業界の知識
Q4:過去10年の「広報」の役割の変化。これからの企業・社会における「広報」の意義や役割とは?
A4:広報の役割は、社会と企業の「接着剤」であり、時代が経過しても不変であると考えます。ボーダレス化が進み混沌とする世界(社会)情勢やSNSも急発展しています。そして、消費者の価値観の多様化や権利意識の向上、記者(マスコミ)のレベルダウンも顕著になっており、20年前に広報を担当したときより、広報を取り巻く状況は厳しくなっていると日々感じています。こういうときにこそ、「原点に回帰」した、社会と企業との「強力接着剤」となり、相互のコミュニケーションアップを念頭に業務することが広報担当者には求められると考えます。
Q5:「広報会議」読者、これからのPR・広報の仕事を担う皆さんへメッセージをお願いします。
A5:「記者も人の子」、神様でも悪魔でもありません。人として付き合えば、いずれはいい報道をしてくれます。ただ、人間関係構築はスグにできませんし、PR任せにもできません。「勘違い」「未熟」記者に対し、ときには“教育的指導”も必要でしょう。広報とマスコミの立場は「イーブン」です。肩の力を抜いて付き合いましょう。