この10年、現場で挑戦を続けてきた35人の実務家の皆さんが考える広報の仕事の醍醐味とは? 企業はもちろん、自治体や大学まで、あらゆる場面で広報の力を実感したというエピソードも満載です。未来への提言、読者へのメッセージもいただきました。
近畿大学 広報部 部長代理 世耕石弘(せこう・いしひろ)1969年生まれ。92年、近畿日本鉄道に入社。以降、ホテル事業、海外派遣、広報担当を経て2007年に近畿大学に奉職。入学センター入試広報課長、同センター事務長を経て、2013年4月より広報部 部長代理、現在に至る。 |
Q1:広報の仕事における「座右の銘」/その理由を教えてください。
A1:「一以貫之」/何事も自分が正しいと信じて実行していくと必ず障壁が現れる。しかし、それでも屈することなく突き進めば自然と壁は崩れる。新しいことに挑む際、いつもこの言葉を信じチャレンジしています。
Q2:これまでのキャリアのなかで、最も広報の力を実感したエピソード、仕事の醍醐味や面白さ、やりがいを感じた経験を教えてください。
A2:大学入試の世界標準であるネット出願は日本ではまったく定着していませんでしたが、大学界の常識にとらわれない近畿大学は、出願の完全ネット化を日本の大学で初めて実現しました。学校関係者からは定着することは不可能と言われましたが、大学界の常識を打ち砕くべく、周到に計画した広報戦略を展開し、結果、予想を覆し志願者数は大幅に増加して、志願者数日本一になりました。今では「ネット出願はもう当たり前」という時代に変わりました。近畿大学初代総長の「不可能を可能にするのが研究だ」という学内で有名な言葉がありますが、我々も広報の力を信じた結果、思いを遂げることができました。「不可能を可能にするのが広報だ」。
Q3:この先10年の間に、広報の仕事に求められるスキルを教えてください。(3つまで)
A3:(1)情報収集力(2)コミュニケーション能力(3)広報を信じる力
Q4:過去10年の「広報」の役割の変化。これからの企業・社会における「広報」の意義や役割とは?
A4:伝え方(媒体など)は変化しているものの、広報に求められる結果には変化はありません。組織の代表として誰に伝えるかをより具体的に設定し、そのターゲットに合わせた伝え方を実践する必要があります。メディアでなくても個人で広く広報することができる状況を鑑みると、ある意味非常に自由な広報が可能になってきていると考えています。その自由な立場で伝える相手に目線を合わせ、耳を傾け、真摯に広報する。結局は基本に忠実に取り組めるかが肝要かと思います。
Q5:「広報会議」読者、これからのPR・広報の仕事を担う皆さんへメッセージをお願いします。
A5:近畿大学は大学の固定化した概念を壊す広報展開に全力で取り組んでいます。様々な業界に様々な固定化した壊すべき概念があると思いますが、近畿大学ではその概念を壊そうという想いをともに社会に広報してくださる企業様、団体様を探しています。一緒に進歩を妨げる概念(壁)を壊し、自由な競争環境を創り出しましょう。広報にはそれだけの力があると信じています。