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デジタル広報再入門 実践編

コンテンツマーケティングの浸透で拡大、広報の役割と可能性を考える

宗像淳(イノーバ 代表取締役社長)

役立つコンテンツをきっかけにユーザーを呼び込む「コンテンツマーケティング」が広がっている。「ユーザー視点の情報発信という点で、広報と相性が良い」と、イノーバ代表取締役社長の宗像淳氏。注目される背景を把握し、広報活動にどう取り入れられるかを探ってみよう。

コンテンツマーケティングの流行

最近、コンテンツマーケティングという言葉がよく聞かれるようになりました。広くコミュニケーション活動に携わる人からBtoB企業の営業担当者まで取り入れられる考え方なので、注目されつつあります。

海外では、コンテンツマーケティングが3年前くらいから盛り上がっていますが、日本で流行してきているのはこの半年ほどかなという感覚です。私が代表を務めるイノーバは、コンテンツの戦略立案や制作、オウンドメディアの構築、効果測定などのサービスを提供しています。

実は設立の背景にコンテンツマーケティングがあります。前職でソーシャルメディアマーケティングの立ち上げに携わり、コンテンツ中心のマーケティングが世の中に必要とされているのを痛感したのです。

ただ、市場が盛り上がるのは大変喜ばしい反面、コンテンツマーケティングという言葉が誤解され、単にウェブ上に数多くコンテンツをアップすればいい、といった間違った考え方で一人歩きすることも懸念されます。理想的な形で実践されるように、力を入れていきたいと考えているところです。

以下、この流行の背景や先進事例などを紹介しつつ、コンテンツマーケティング時代の広報のあるべき姿について考えていきたいと思います。

一方的な発信は効きにくい

そもそもなぜ、コンテンツマーケティングが注目されているのでしょうか?それは、大きく3つの理由があります。

ひとつはGoogleのアルゴリズムがコンテンツ重視になってきていること。2つ目はソーシャルメディアを活用する上で、コンテンツが必要不可欠であること。3つ目は、スマートフォンが普及するにつれて、ユーザーへのリーチが難しくなっていることです。

この中で最も重要なのは、スマートフォンの文脈だと思います。スマートフォンが普及し、ネットへの接触時間が増えると、むしろリーチしやすいのではないかと思われるかもしれません。それが、実は逆なのです。

人々が接触する情報が膨大な量になり、従来型の広告の効果が落ちてきているということが、各所で指摘されています。今や、消費者のほとんどがスマートフォンを持ち、検索エンジンやソーシャルメディアを活用して能動的に情報収集をするようになっています。

そうすると、企業が提供したい情報、消費者の側から見ると受動的に届けられる広告のような情報は注目されにくくなってしまったのです。

アメリカの調査ですが、過去30年間でテレビCMの効果が半減しているという論文が出ていたり、スマートフォンやタブレット端末を片手にテレビを閲覧する、いわゆる「ながら視聴」が原因で、テレビCMがそもそも見られていないという調査結果が発表されていたりしています。要するに、従来のように広告を使った一方的なコミュニケーションが通用しなくなってきていることが背景にあるのです。

このような状況下で生まれてきたのが、コンテンツマーケティングです。

コンテンツマーケティングでは、顧客にとって役に立つコンテンツを活用して顧客を呼び込みます。広告に頼らずに、ブランドへの好意度を高めたり、顧客獲得につなげたりする手段として、注目が集まっているのです。

では、コンテンツマーケティングでどのようなことが可能になるのか?その先進的な事例をいくつか紹介しましょう。

記事をきっかけに呼び込む

●コンテンツマーケティングの先進事例 Case 1

メガネにまつわる幅広いトピックスを掲載
オーマイグラス「OMG PRESS」

img01

(上)メガネをテーマにしたウェブマガジン「OMG PRESS」。写真を多用したファッション誌のようなつくり。

(下)ECサイト「Oh My Glasses」。ここでの購入者の2割が「OMG PRESS」の閲覧経験があるという。

まず、コンテンツマーケティングを活用して新しいビジネスに挑戦しているベンチャーを紹介します。オーマイグラスという会社で、オンライン上でメガネを販売しています。メガネを自社ECサイトで扱う一方で、同社はメガネをテーマにしたウェブマガジン「OMG PRESS」をつくり、メガネに興味のある人向けの記事を掲載しています。

日本では知られていない海外ブランドのメガネや ...

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