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本田哲也のGlobal Topics

YouTubeに二次感染者の映像を投稿、エボラ危機に挑む世界的なPR会社とは?

本田哲也

エボラ出血熱に二次感染したニーナ・ファムさん。
YouTubeでは病院にて撮影された、彼女の生の声が配信された。

世界的なクライシスの裏には、必ずと言っていいほどグローバルPR会社の介在がある。2014年11月時点、いまだ脅威が続いているエボラ出血熱。世界保健機関(WHO)の11月7日の発表では、11月4日の時点で、1万3268人の感染が確認され、うち4960人が死亡。ギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリア、セネガル、マリ、アメリカ合衆国、スペインの8カ国で感染者が確認されており、予断を許さない状況だ。

10月初旬、たった56秒の動画がYouTubeにアップされた。完全隔離された病室のベッドに横たわるアジア系の可愛らしい女性。「I love you guys(みんな愛してるわ)」と、感染防止服に身を包むドクターに言いながら涙するこの女性は、米テキサス州ダラスでエボラに二次感染した26歳の看護婦、ニーナ・ファムさんだ。勤務するテキサス・ヘルス・プレスビテリアン病院で、米国初の感染者となったリベリア帰りの男性から二次感染した。動画はその病院で、ファムさんがアメリカ国立衛生研究所(NIH)に搬送される前に撮影された。

時を同じくして、このテキサス・ヘルス・プレスビテリアン病院と契約したのが、世界的なPR会社であるバーソン・マーステラ社。同社はニューヨークで1953年に創業。世界に73オフィスを有する、世界第5位のグローバルPR会社だ。

同病院は、9月26日に訪れたリベリア人男性のエボラ感染を診断できず、なんと抗生物質を処方しただけで帰宅させた。その2日後に入院させることになるわけだが、この初動における致命的なミスがパニックを呼び、そこに同病院の稚拙な情報開示と発信が拍車をかける。マスコミや専門家、当局である米疾病対策センター(CDC)、そして病院の従業員や患者など、あらゆるステークホルダーが混乱に陥った。そこで、危機管理広報で世界的に名高いバーソン・マーステラの登場となったわけだ。

「二次感染患者であるファムさんの生の声と、病院が万全を尽くしている事実」を伝える映像をYouTubeにアップしたのは同病院だが、バーソン・マーステラが指南していることは明らかだ。そして、ファムさんは米国におけるエボラ拡大防止運動のシンボルとなっていく。

また、10月24日には、マイクロソフト創業者で慈善事業家のポール・アレン氏が、エボラ対策強化に1億ドルを投入することを発表。このプレスリリースの報道関係問い合わせにもバーソン・マーステラの名がある。広報対応は危機管理の成否を分ける。同社の指南で不用なパニックが回避され、エボラ危機が1日も早く収束することを祈る。

1年間ありがとうございました。来年も続きます!

本田哲也(ほんだ・てつや)

ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー/戦略PRプランナー。主な著書に『最新 戦略PR 入門編/実践編』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)、共著に『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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