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本田哲也のGlobal Topics

世界トップの「つぶやき大都市」ジャカルタ、国の空気を読んだ保険会社の成功例

本田哲也

アクサが開設した医療情報サイト「SehatuntukSemua(みんなの医療)」。

インドネシア。間違いなく、いま世界でもっともアツい国のひとつだ。広い国土とたくさんの人と多民族性。人口およそ2億5千万人が、日本の約5倍の国土に住む。GDPは日本の6分の1ほどだけど(2013年IMF調べ)、消費意欲が活発な中間所得層の伸びがスゴい。2020年にはこの層以上の人口が1億4千万人を超えると予想されていて、日本の人口に匹敵する消費者群を取り合って、家電や自動車、金融サービスなどのPR合戦が本格化し始めている。今回は、そんなインドネシアのPR事情をお届けしよう。

まずメディア事情。実はインドネシアはソーシャルメディア大国。首都ジャカルタは、東京やロンドン、ニューヨークを押さえて「ツイート数」で世界1位になったこともある「つぶやき大都市」だ。スマホもどんどん普及していて、2014年現在で6千万人を突破(eMarketer調べ)、9割近くがSNSを利用している。日本人以上にスマホをいじりまくっている印象だけど、じゃあマスメディアの影響はどうかというと、これが案外いまだに強いのはテレビだったりする。都市部でのテレビのリーチは100%近くあって、ここ数年も影響力は維持されている。落ち込みが激しいとはいえ、ラジオのリーチ率が未だに新聞並みに50%近くあるのは、アジア最悪とも言われる渋滞のおかげ(笑)のようだ。

一方、国家としてのインドネシアは急速に発展中。国の政策やサービスもダイナミックに変化する。世の中の動きを捉えるのが真髄のPRとしては、そこに成否もかかってくるというわけだ。保険会社のアクサはそこをうまく活用した。日本から見ればインドネシアは医療後進国。医療設備は劣悪で、1万人に6つのベッドしかないとも言われる。インドネシア人もそれを分かっていて、病院を信頼していない。病院を信頼していないから保険の必要性もイマイチ感じていない。

これはアクサにとって困る。宣伝以前の問題として、保険の検討意向やイメージの向上が課題だったわけだ。そんな中、国の方針転換で、一気に医療設備に対する投資への機運が高まる。アクサはこれを逃さなかった。即座に、「SehatuntukSemua(「みんなの医療」の意味)」という医療設備や医療情報を発信するサイトを開設。多面的にPRし、スマホアプリも展開した。これが、医療への期待値が上がり始めたインドネシア人のニーズに見事に合致。SNSでの口コミも寄与して、インドネシア人にとってなくてはならない情報ポータルに育ち、アプリは医療情報アプリのランキングで1位に。結果的にアクサ自体の好意的なブランドイメージも獲得することができた。

商品やサービス自体のPRもさることながら、まさに「お国の空気」を読んだPR戦略。まだまだダイナミックな成功例が続出しそうですね。ではまた来月!

本田哲也(ほんだ・てつや)

ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー/戦略PRプランナー。1970年生まれ。主な著書に「戦略PR」「ソーシャルインフルエンス」(ともにアスキー新書)など。フライシュマン・ヒラードは世界中に100拠点以上を持つ大手PR会社。

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