日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

大学ゼミナール訪問

学生主導でCATV番組制作、中央大学のジャーナリズムプログラム

中央大学 松野良一ゼミ

メディア研究を行っている大学のゼミを訪問するこのコーナー。今回はマスコミを目指す学生が集う松野良一ゼミにお邪魔しました。

中央大学 松野良一ゼミ
設 立 2003年4月
学生数 2年生12人/3年生12人/4年生11人
OB/OGの主な就職先 NHK、日本テレビ、朝日新聞社、毎日新聞社、読売新聞社、共同通信、時事通信、講談社、電通、博報堂プロダクツ、東急エージェンシー、読売広告社など

学生主導で番組制作

「それって、面白いの? 検討し直して」「浜辺のカット、絶対押さえて」─。まるでテレビ番組の製作現場のように、教授から学生へ指示が飛ぶ。中央大学FLPジャーナリズムプログラム、松野良一ゼミでの一コマだ。こちらのゼミでは、実際に地元のケーブルテレビで放送する番組を制作するというユニークな授業を実施している。中でも今年で放送10周年を迎える「多摩探検隊」は、地元でも高い知名度を誇る人気番組となっている。

FLPとは、学部を超えて専門性の高い授業を受講できるプログラムで、松野ゼミはジャーナリズムが専門。法学部、経済学部、商学部、文学部、総合政策学部の2~4年生35人が籍を置いている。

授業では、地元・多摩の歴史やまちの新たな魅力を発見する「多摩探検隊」、学生が地域の子どもたちと一緒に番組を制作する「子ども放送局」、日本各地のネタをリポートする「にっぽん列島おもしろ探検隊」などの番組を数人のチームに分かれて制作している。企画から取材、撮影、編集までを学生がすべて担当。1本あたり、半年から1年近くかけながら制作していく。

扱うテーマは、「八王子空襲」といった歴史的な出来事から、「猫神社~青梅編」などバラエティ的な素材まで扱う。松野先生は「足元の多摩地域から普遍的な問題を考えます。Act Locally,Think Globallyがテーマです」と強調する。

教授からの厳しいツッコミも

この日は、各番組の制作状況を報告する「制作ミーティング」の日。会議の司会、進行も学生主導でてきぱきと進んでいく。それぞれが授業の時間外に進めてきた、進捗状況や課題点を報告しあう。

今回の企画会議で出された議題は、子ども放送局の番組として、福井県高浜町で毎年開催されている夏祭り「漁火想」をどう取り上げるか。子どもたちが観光客にリポートする様子を撮影するほか、関係者に様々な色の絵の具で手形を押してもらい、この手形の模様を組み合わせて「大漁旗」をつくることを企画した。

しかし、一筋縄では企画は通らない。「手形を押すのはいいけれど、衛生面は大丈夫なの?」「指紋は個人情報にもつながるよ、ちゃんと考えている?」─。先生からは、まるで報道機関のデスクのような鋭い指摘が飛ぶ。こうしたやり取りの中で企画が振り出しに戻ることもしばしばだというが、このメディアの現場さながらの授業が学生たちを鍛えていく。卒業生の就職先を聞くと、NHKをはじめ、日本テレビ、テレビ朝日など全国ネットのテレビ局から、朝日新聞、読売新聞など全国紙まで大手メディアがずらりと並んでいるのもうなずける。夜7時すぎからの授業スタートにもかかわらず、熱を帯びた学生たちの議論は遅くまで続いた。

制作ミーティングの様子。熱い議論は午後9時過ぎまで続いた。

取材を通じて人として成長

最近制作された番組は、多摩探検隊で放送された『絵手紙に綴られた東日本大震災 東京・狛江―宮城・石巻』。宮城県石巻市の仮設住宅で開かれている絵手紙教室を舞台に、これまで口にできなかった被災者の悩みや苦しみを絵手紙に表現することで、心の傷を少しずつ癒していく姿を追った。取材を担当した学生は「震災から3年が経っても、苦しんで前に進めずにいる人がいる」と、いまだ残る震災の爪あとを実感したという。

授業を通じて、どのような変化があったのだろうか。学生に聞いてみると「取材対象とのやり取りの中で、話し方が身に付いたと思う」「社会の人と交流する中で責任感が生まれた」など、取材を通じて大きな成長を手にした様子。

また、取材慣れしていない一般の人に話を聞くことは、コミュニケーション能力の向上にも一役買う。ある男子学生からは「シャイな性格だったが、学外の人と取材で話をすることで恥じらいがなくなった」といった声も。授業を通じて、番組制作の技術だけでなく、人としての成長につながっているようだ。

『広報会議』読者にオススメ!

『組織不正の心理学』
蘭 千壽、河野哲也(編)慶應義塾大学出版会、本体2200円+税
官公庁や大企業の組織的な不正について、心理学的、コミュニケーション論的に分析。また、具体的な組織の不祥事事例を取り上げ、そのメカニズムを解説している。松野先生も執筆者として参加。危機対応を考える企業広報担当者に、ぜひ一度手に取ってもらいたい一冊だ。



松野良一先生 PROFILE


現場主義は今も健在。

朝日新聞記者を経て、TBSで報道ディレクターを務めた経験を持つ松野先生。現在は総合政策学部長も務め、多忙を極めているが、学生とともに取材で台湾に通ったりと、あふれるバイタリティは現役記者にも劣らない。

松野良一(まつの・りょういち)
九州大学卒業。筑波大学大学院修了。朝日新聞社会部記者、TBSプロデューサーを経て、中央大学総合政策学部教授。これまでゼミで制作したドキュメンタリーは数々の賞も受賞している。著書に『市民メディア論』(ナカニシヤ出版)、編著に『証言で学ぶ「沖縄問題」 観光しか知らない学生のために』(中央大学出版部)など。

大学ゼミナール訪問 の記事一覧

学生主導でCATV番組制作、中央大学のジャーナリズムプログラム(この記事です)
「睡眠よりもメディア研究の日々」テレビの現場出身、上智大・碓井先生のゼミに潜入