世界最強のユーチューバー」のピューディパイ(PewDiePie)の公式サイトから。有力ユーチューバ―の年収は億単位とも言われる。
2014年、ネット動画の本格化がいよいよ始まったと言われる。ひとつの大きな注目が、ユーチューブで活躍する人気クリエイターたち「ユーチューバー」だ。国内ナンバーワンと言われるHIKAKIN(ヒカキン)は、2010年に公開した「スーパーマリオビートボックス」でブレイク。チャンネル登録数は5月時点で376万人を超える。最近では「スカルプD(アンファー)」のCMに起用されるなど活躍の幅も広がる。昨年秋には、日本初のユーチューバーのプロダクション「uuum(ウーム)」が発足、HIKAKINをはじめ有力ユーチューバー13名が所属している*。
この分野において先行するのが、ユーチューブの誕生した国、アメリカだ。世界最大のユーチューバープロダクション「メイカー・スタジオ(Maker Studios)」は300人強が働く規模。単なる商品紹介にとどまらず、ブランド専門番組の開発や、コスメなどの共同商品開発にまでユーチューバーを進出させている。そもそもは、2006年にチャンネル開設するやいなや人気者になった“元祖ユーチューバー”、リサ・ドノバンと仲間が2009年に創設。所属ユーチューバーや制作スタッフを拡充し、いわゆる「マルチチャンネルネットワーク(MCN)」として急成長した。現在、総視聴数は55億、チャンネル登録者数は3億人。もはや凄すぎてよく分からない数字だが(そもそも独立した各チャンネルの集合体であるので、こうした集計にどこまで意味があるかという議論はある。既存のテレビネットワークとの比較で算出されているようにも思える)、その将来性を買われ、このたびメイカー・スタジオは5億ドル(約510億円)でディズニーに買収されることが発表された。まさに動画テクノロジー時代のドリームストーリーだ。
メイカー・スタジオに所属する、「世界最強のユーチューバー」がピューディパイ(PewDiePie)。チャンネル登録者数は2600万人。ゲームの実況動画投稿で有名になった彼は24歳のスウェーデン人で、昨年の年収は4億円を超えると言われる。日本で「秒速で1億円稼ぐ男」を自称する某氏もびっくりのレベルだ。そのほかにも、カリスマ女性ユーチューバーのミシェル・ファンや、ティーンエイジャーに人気のiJustineなど、絶大な影響力のユーチューバーがひしめいている。
ユーチューバーは、いわゆる「インフルエンサー(影響者)」の進化形だ。かつてブロガーPRや口コミマーケティングが流行したが、その効果は限定的だった。しかしその後、ソーシャルメディアの普及と動画テクノロジーで、インフルエンサーとしてのユーチューバーは、俄然そのポテンシャルを高めているように見える。PRパーソンこそ、ユーチューバーを目指すべきかもしれない。「秒速4億円」も夢じゃないかも。ではまた来月!
本田哲也(ほんだ・てつや)ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー 戦略PRプランナー。1970年生まれ。主な著書に「戦略PR」「ソーシャルインフルエンス」(ともにアスキー新書)など。フライシュマン・ヒラードは世界中に100拠点以上を持つ大手PR会社。 |