企業やブランドの持つメッセージや世界観を伝える手段として重要な役割を担うブランドツール。一口にブランドツールと言えど、目的によってその種類や手法もさまざま。特にグローバル規模で展開する企業やブランドが用いるブランドツールは緻密なコミュニケーション設計がなされ、ツールを用いた情報発信の仕方も多岐に渡る。グローバル企業が消費者との接点として用いるブランドツールはどのようなもので、そこにはどんな意図や背景があるのか。ひとつひとつのツールをもとに掘り下げる。
郵送で届いたブラックポット、ふたを開けると招待状が出現
今年8月に開催された発表会の招待。リサイクル素材でできたブラックポットの中に招待状を入れ、容器に宛名ラベルを貼って配送した。ポットを持参すると、中にパックを入れて持ち帰ることができるエコな“お土産”にもなる。
フレッシュで色鮮やかな自然派化粧品を展開するイギリス生まれのコスメブランド「ラッシュ」。野菜と果物を主とした新鮮な原材料を使い、すべての製品にわたり全成分をラベルに明記。動物実験を行わない会社からのみ原料の買い付けを行うなど、徹底したブランドポリシーを持つことでも知られている。
コンセプトは、“ヨーロッパのフレッシュマーケット(市場)”。全国約150店という店舗での商品の陳列、演出をはじめ、メディア向け発表会や体験イベントなどにおいてもこのコンセプトが軸となる。「その日必要なものを、新鮮なうちに必要な分だけ買う、という市場スタイルがラッシュの根本。店舗ではソープや洗顔料は量り売りで販売。100グラムからグラム単位で購入できます。新鮮でカラフルな商品が並ぶ賑やかな店舗で、市場を訪れた時のようなワクワク感を提供したいと考えています」(ラッシュジャパン PRマネージャー 宮腰陽子氏)。
今年8月に開催したクリスマス新商品のメディア向け発表会も、随所に“フレッシュ”というコンセプトを表現すべく市場のような演出が施された。製造工場にある貯蔵庫を再現し、野菜や果物の入った木製のケースが置かれたエントランスを抜けると、カウンターキッチンで料理さながらにフェイスパックなどの製品をつくるスタッフがお出迎え。新鮮で安全な原材料へのこだわりなど、ブランドの持つ本質的な部分を強く押し出した。「ラッシュでは“キッチン”と呼ぶ国内の工場で製品をつくっていますが、原材料の良さ、製品の特性を体感してもらうには、製造過程を生で見てもらうことが一番。そのため、メディア向け発表会や店舗イベントなどでは“出張キッチン(工場)”のような場を設け、製品づくりを目の前で見てもらえるようにしています」。
製品の“フレッシュハンドメイド”を伝える“出張キッチン”がお目見え
製品をつくる“キッチン”と呼ばれる工場で働くスタッフらを招き、“キッチン”を再現。工場では、生き生きと働く若者が多いこともブランドの持つ特徴だ。新鮮で安全な原材料へのこだわりとともに、ラッシュで働く“人”を立てたアプローチも意識している。