2012年のロンドン五輪開催を契機に、国際的な評価機関によるロンドンの「都市力」が上がり、世界のトップに躍り出たことはよく知られる。東京も上位にランクインされているが、その実力は7年後にどう変わるのか。識者が分析した。
経営者からの評価は低迷
東京都の試算によると、オリンピック開催で期待される経済効果は約3兆円。だが、明治大学の市川宏雄教授は「それは競技場と運営に限った試算に基づくもので、実際は少なくとも数十兆円以上の効果が見込めるはず」と断言する。
市川教授は、海外の第一線の世界都市研究家とともに「世界の都市総合力ランキング」(GPCI=森記念財団発表)の策定に関わる都市研究の第一人者だ。都市力ランキングにはそのほか、都市のグローバル度を評価する「グローバル・シティ・インデックス」(GCI=A.T.カーニー発表)、優良な人材が集まる都市を見つけ出すGCCI(EU およびシティーグループ発表)、生活者の暮らしやすさに着目したQoL(グローバル情報誌『MONOCLE』発表)などがある。
GPCIは「経済」「研究開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通・アクセス」の6項目の都市機能を評価基準に、より魅力的でクリエイティブな人々や企業を世界中から惹きつける都市の「磁力=総合力」を分析したランキング。都市によっては「経済」分野のスコアが強かったり、「文化・交流」が強かったりと、都市の個性や魅力の“質”の違いも浮き彫りにする。
GPCI-2012(2012年版)によると、東京は、ロンドン、ニューヨーク、パリに次いで第4位。上位3都市は「経済」「研究・開発」「文化・交流」「交通・アクセス」の4分野が強いが、物価や家賃が高いため「居住」や「環境」分野が弱点。一方東京は、世界トップの経済力を持つ都市でありながら、「環境」のスコアも高く、バランスのとれた総合力を発揮している。
GPCIの特徴に「アクター別ランキング」がある。経営者、研究者、アーティスト、観光客、生活者、それぞれの視点で都市の評価をしたランキングだ。経営者による東京のランキングは7位。1位ロンドン、以下シンガポール、香港、ニューヨーク、上海、北京に次ぐポジションだ。アジアの主要都市の中で東京より低いのはソウルのみ。海外企業や投資家にとって、東京は、アジアのビジネス拠点とてして魅力的ではないと評価されていることが分かる。