買い物行動をデータで捉え、個々の消費者理解を深める
国内市場に大幅な成長が期待できないこれからの時代、大半のメーカーにとっては、従来からの売り上げ・シェア競争に加え、優良顧客の獲得競争が大きな課題となっている。そのためにどのようにデータを駆使するべきか。博報堂 博報堂買物研究所の前嶋誠一郎氏が解説する。
デジタル販促 瞬間を捉えて売上増
対立するもののように捉えられてきたテレビCMとインターネット広告だが、テクノロジーの進歩に伴い、互いに補完し、力を発揮できるようになってきた。HAROiDが取り組む、テレビ放送と「オンラインtoオフライン」の連携や、共通ポイントサービスが好例だ。同社の安藤聖泰社長に手応えを聞く。
キリンは9月20、27日の両日、缶チューハイ「氷結」のプロモーションとして、スマートフォンを通じて視聴者が参加できるテレビCMをオンエアした。CMの長さは60秒。
お笑いトリオ「ダチョウ倶楽部」のメンバー、上島竜兵さんが十八番の熱湯風呂ならぬ“氷結風呂”のふちにまたがり、「絶対押すなよ!」とネタ振り。風呂の氷はCGでスマートフォンと連動し、視聴者がスマホ画面をタップすると、CM中の氷が連動してリアルタイムに割れる仕掛けだ。王道ネタに参加できるとあって、スマホのタップ回数は両日合わせ約600万回に達した。
参加した視聴者には先着順で、コンビニエンスストアで「氷結」1本と交換できるクーポンコードをプレゼント。2日間合計で15万本分のクーポンが取得された。コードはコンビニ店頭の端末で入力し、発券する方式のもの。
「スマホの画面がタップされた回数に従い、オンエア中のテレビCMに合成したCGを変化させる」「合計15万人に先着順に、クーポンの応募権利を付与する」「各コンビニで発券できるようにする」…といった数々のアクロバティックな仕掛けを実現させたのは、HAROiD(ハロイド、東京・港区)だ。
「実施したことは本質的には、従来のテレビと変わらないと考えています」。こう話すのは、HAROiDの安藤聖泰社長だ。「テレビに向かい合うとき、消費者は自然とエンターテインメントを期待するものではないでしょうか。どんな番組でも、つい前のめりになるタイミングがあります。テレビCMも同じように、前のめりになって、コンテンツとして楽しんでもらえるような仕掛けが、やっと形になりつつある。そんな感覚を抱いています」
そして今回のポイントは、何と言っても店頭送客を実施できたことだ。「キリンに限らず、メーカーにとっては、コンビニエンスストアは重要なパートナー。私たちが提供する企画と仕組みによって実際に送客する仕掛けを盛り込めれば、メーカーとコンビニエンスストア双方がWin-Winとなります」
サンプリングによるトライアル獲得とともに、サンプリング対象の商品が店舗の棚に並ぶことになり、プロモーション効果にも期待できる。「もちろん、今回のテレビCMで改めて『氷結』に注目したり、コンテンツを楽しんで好意度を高めたり、といった消費者は少なくないはず。今後は、こうした人たちの意向変化も追いかけられるようになれば、新しい世界が開けることと思います」
テレビを起点に、消費者との継続的なつながりを築く …