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トップの現場力

店は自分たちでつくる」コメダ珈琲店オーナーの現場力

臼井興胤(コメダ 代表取締役社長)

1968年に創業し、名古屋を中心に、地元密着の喫茶店を展開してきたコメダ珈琲店。看板商品の珈琲、自社製のパン、木やレンガを使った空間で、くつろげる場を提供してきた。出店を加速し、現在は全国に約650店舗を展開。フランチャイジーがほとんどを占めるコメダ珈琲店の現場力とは?

コメダ 代表取締役社長 臼井興胤氏(うすい・おきたね)
1958年生まれ。三和銀行、セガ、ナイキジャパン経て、日本マクドナルドCOOに就任。その後セガ代表取締役社長、米グルーポン社東アジア統括副社長を経て、2013年より現職。

本部に頼らない自立したオーナーのいる強み

―貴社にとっての現場力とは?

店舗が現場、それ以外は、黒子でありインフラです。店舗の主役はもちろんお客さま。私たちの提供価値である「くつろぐ、いちばんいいところ」を実現するのが現場です。よくスタッフに話すのは「くつろぐ場はお客さまのために提供するのであって、決して従業員がくつろぐ場ではない」ということ。お客さま窓口となるコールセンターに集まる指摘で多いのは、私語なんです。昨今は店舗に対する意見を、その場で言うのではなくSNSで書き、それが一気に広まるということも起きています。それならば、お客さまの生の声を吸い上げ、きちっと改善していこうと、コールセンターの設置に至りました。

コメダ珈琲店は99%がフランチャイジー(加盟店)です。本部は現場で仕事がしやすくするためのサポートをし、「空気のような存在」になることを目指しています。というのも、当社の場合、本部がオーナーに対して上から何かを指導するということがないのです。喫茶文化が根強い名古屋で発祥したコメダ珈琲店は、オーナーの「本部なんかあてにしない、自分の力でつくっていく」という意識がとても高い。「店は生業」という思いでやっている店は強いですね。

私がかつて在籍していたマクドナルドは、どの店も同じサービスを提供しようとしてきましたが、コメダはその真逆を行きます。私が社長に就任してから、チェーン共通のキャンペーンを初めて実施したり、季節ごとの新しい商品をいれたりと少しずつ変わってきましたが、当初は「ミステリーショッパー(覆面調査)を入れたい」などと提案すると、オーナーから「うちはやらない、いい加減にしろ」と言われたものです。本部の指示を待たないというのがコメダ珈琲店の強さ。すごいなこの現場力は、と驚かされました。

そんな中、1店ごとの勝負でなく、チームとなって、コメダブランドとして戦っていくときには、本部にもできることがあります。ラグビーでよく使われる「One for all, All for one」の考えに近いかもしれません。全店キャンペーンもその一つです。現場の知恵をお借りしながら企画を実施しています。実はオーナーから「現場は違うから、そんなキャンペーンうちはやらないよ」と言われることもあります。しかし、こうした指摘に、私たちは助けられているのです。

コンシューマーに関するビジネスの現場は、コンシューマーのそばにしかありません。現場から離れ、コンシューマーのニーズや動きについていけずにつくられた企画は、オーナーに退けられます。私たちには、こうした心強いオーナーたちがいますから、今後会社が大きく間違った方向に進むこともないでしょう。

かつては、美味しいものさえ提供していれば、常連客が来ていた喫茶店ですが、「QSC(クオリティー、サービス、クレンリネス)」の中でも、サービスが一番前に来なければ、私たちの目指す「くつろぐ、いちばんいいところ」は作れないと思っています。コメダ珈琲店では、独自製法の珈琲と自家製のおいしいパンを提供していますが、くつろげる空気感、時空をつくっているのは、そこで働くスタッフです。現在、全国に約650店舗を展開しており、出店も加速する中で、トレーニングプログラムやeラーニングなどの人材教育にも力を入れているところです。

朝6時から自ら店に立ち珈琲をいれる

―普段お店には行かれていますか?

週に一度モーニングの時間帯は ...

あと58%

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