料理や雑貨のスタイリストとして、女性誌や料理本で活躍する伊藤まさこ氏。自分の暮らしの道具や生活を紹介する本も多数出版し、シンプルで心地よい生活スタイルが人気を博している。好きなものがはっきりしているからこそ、「欲しいもの」はあれこれ考えずに即決で買う。そんな伊藤氏が買ったお気に入りのオブジェ、20年来通い続けている店について語った。
やさしい緑が心地よいアトリエの庭にて。旅が大好きで、思い立ったらすぐに旅に出る。
「これが欲しい」直感に従い迷わず買う
─最近はどのような買い物をしましたか。
旅が好きでよく出かけますが、旅先では、日本でも海外でも、必ず市場や蚤の市を訪れます。先日、台湾に旅行した際も、市場で現地の食材を買い込みました。干しエビ、乾燥きくらげ、麺、テンメンジャン、ほかにもいろいろと。すでに何度も行ったことのある場所なら、何をどこで買うかイメージがついているので、目当ての食材を次から次へと買っていきます。その迷いのない買い方を見て、一緒にいた友達はとても驚いていました(笑)。
買う量も多いんです。家に帰ってからも、旅先で出会った食材を楽しみたいですから。毎日の食事に取り入れたり、友達を招いてお土産代わりの食事会を開いたりします。旅土産は、ややもすると義務的になりがちですが、現地の食材を使った食事会なら、現地の雰囲気をおすそ分けしながら「今度はみんなで行きましょう!」と盛り上がれるので好きなんです。
─旅先で市場を訪れる魅力は何ですか。
その土地ならではのものに出会えたり、その土地の暮らしぶりが垣間見えたりするのが興味深いですね。以前、ニューヨークのオーガニック食材市場で、メープルシロップの綿あめを発見しました。「そうか、メープルシロップもざらめ状にできれば、綿あめになるんだ」と新たな発見でした。知らなかったものとの出あいも、市場を歩く楽しみの一つです。
─普段の買い物でも、迷いなく購入するのでしょうか。
はい。「これが欲しい」と思ったら、迷わず数秒で決めてしまいます。あまりあれこれ考えません。決断が早いので、お店の人の印象にも残るようです。蚤の市で骨董屋の店主に気に入られて、安くしてもらったり、オマケしてもらったりしたこともあります。
スタイリストという仕事柄、いろいろなものを見てきましたから、ものを見る目が肥えてきたことも一因なのかなと思います。もちろん、買い物ではたくさん失敗もしました。そうした経験から、自分が欲しいもの、必要なものを瞬時に判断できるようになったのかもしれません。
以前、リサ・ラーソンというアーティストによる陶器のオブジェを買いました。さまざまな表情や色の20体ほどの人型オブジェが並ぶなかで、ある一つのオブジェと“目が合った”んです(笑)。これが家にあったらすごく素敵だろうな、と思いました。これまでオブジェを買ったことはほとんどありませんでしたが、これをきっかけに、家にオブジェ類が増えています。
リサ・ラーソンの作品は…