調査データをもとに
企業の商品開発を支援
金沢工業大学 神宮英夫教授の専門は、応用実験心理学。所属する心理情報学科は、心理学をものづくりに応用するというコンセプトで2004年に設立している。心理学と言うと、カウンセリングをイメージしがちだが、神宮教授が取り組むのは、実験やデータに基づいた、ものづくりへの貢献。エンドユーザーに「いいな」と思ってもらえる商品づくりのために心理学を生かすもので、エンジニアリングサイコロジーとも呼ばれている。
調査で採用する手法は、アンケート調査はもちろん、生理・脳機能測定や行動観察、言語データの解析などで、ニューロマーケティングの分野にも近い。顧客が商品と接し、どのように受けとめているのかが分かるデータが収集できるなら、あらゆる手法をとると言う。「こうした調査でありがちなのは、例えばアイトラッキングで商品のどこに目が行っているのかは分かったけれど、なぜそこに目が行ったのかまでは分析できていないとか、商品を美味しいと感じていることは分かったけれど、製品のどのあたりが美味しさにつながっているのか分かっていない、といったこと。しかしデータの背景にある『なぜなのか?』がつかめなければ、次なる打ち手につながりません。調査結果から、品質改善につながる提案ができる研究をすることがポイントです」と話す。
現在20社強の企業と共同研究をしており、企業から委託を受けて研究を進めるケースもあれば、秘密保持が厳しくない分野については、学生が実験を行うことを前提に企業と年間12万円で契約し、研究を行うケースもあるという。
企業から依頼される悩みは「自信を持って新商品を打ち出したが売れていない。売れるための提案をしてほしい」、「商品リニューアルにあたり、これまでにない切り口を打ち出したい」などだ。企業からこうした依頼が寄せられる理由を神宮教授は次のように話す。「新しい商品を開発するには、他社にない切り口が当然必要です。調査会社に依頼して、アンケート調査を行っても、競合他社も同じように調査会社に依頼していたら、結果はほぼ変わらず …