レンタル・シェア文化を浸透させるためのブランディング (後編)
必要なときに必要なだけ利用できる経済性や合理性が支持され、広がりを見せているレンタル・シェアリングサービス。車からファッション、スペース、スキルまでさまざまなカテゴリーでサービスが生まれている。ただ、なんとなく存在は知っているものの、一歩を踏み出すには至っていない生活者が多いのも事実。成長過程のサービスの最新プロモーションを取材した。
業界別販売促進
健康志向の高まりに加え、2020年東京オリンピック開催の話題性も相まって追い風が吹くスポーツクラブ業界。一方で、スポーツクラブ会員は人口の約3%とも言われ、拡大の余地が大きい市場でもある。近年は女性専用フィットネスクラブやマシン特化型の小型ジムなど業態も多様化し、競争がますます激しくなっている。ここでは総合型スポーツクラブを中心に集客の取り組みを取材し、スポーツクラブの今後の可能性を探った。
潜在意識に訴えかける
セントラルスポーツ/秋の入会キャンペーン用チラシ。注意喚起&効果訴求で、「これなら私にもできそう」と思わせ行動につなげるのが狙い。
2014年のスポーツクラブの市場規模は約3,100億円、会員数はおよそ300万人。過去10年を通して微増もしくは横ばいの状況が続いている(経済産業省「特定サービス産業動態統計調査より)。
市場を支えるのは、健康志向が旺盛で時間に余裕がある60代以上のシニア層だ。今回取材した大手スポーツクラブのうち、IR資料で会員の年齢構成を公表している2社で見ると、60代以上の会員が約3割を占める一方で、10代20代の会員数は年々減り、2割に満たない。
一方で、入会者数で見ると、最も多いのは20代女性である。ただ、若い世代は日々の生活が忙しく、ペースがつかめず退会するケースが多い。この世代の継続率向上は業界全体の課題と言える。
最近は、トレーニングマシンに特化した24時間型ジムや、女性専門フィットネスクラブなどが、手頃な価格や利便性を武器に躍進している。そのような中で、総合型スポーツクラブがその強みをどう発揮していくのか。価格訴求に代わる価値訴求の取り組みが注目される。
「セントラルスポーツ」は、総合型スポーツクラブにおいてオールターゲットに向けたサービスを強みにしながら、一方で多様化するニーズにもきめ細かく対応することで競争力の強化を図る。プログラム開発を外注する企業が多いなか、顧客ニーズをいち早く反映した独自プログラムを3カ月ごとに投入し、既存会員を飽きさせないための工夫を凝らす。14年度は、レギュラー及び期間限定のプログラムを34本開発した。
女性向けの「ビューティープロジェクト」は、目玉プログラムの一つ。小顔エクササイズや、肩凝りや姿勢の崩れの予防・改善など、女性ならではの体の悩みや不調の解消に特化している点が特徴だ。「最近の若い女性には『ダイエット』というキーワードだけでは響きにくい。一方で、美容効果への期待や、体調の乱れを整えたいというニーズが高く、それらをプログラムに反映させています」(同社マーケティング部の新藤智也氏)。また、男性向けには引き締まった体を目指す強度の高いトレーニング、一般向けには遊びの要素を取り入れた「けん玉フィットネス」など、“旬”を意識した独自プログラムで既存会員の満足向上を図る。
また、個人に合ったトレーニングをマンツーマンで指導する「パーソナルトレーニング」も強化している。無料体験機会を増やすとともに、パーソナルトレーナーの育成と拡充にも努めている。従来は一般的にあまり知られていなかったパーソナルトレーニングだが、最近は専門ジムが大々的に宣伝した影響もあり、認知が高まりつつある。新藤氏によると、先行するアメリカではスポーツクラブの売り上げの約15%をパーソナルトレーニングが占めており、日本でも認知が高まればさらに伸びる可能性があるという。同社も売り上げの15%を目指す。
昨年には、女性専用ホットスタジオ「ヨガピス」や24時間のマシン特化型ジム「ジムセントラル24」などの新業態も出店した。ヨガピスは、少人数のスクール制でアットホームな雰囲気が売りだ。ジムセントラル24は、リーズナブルな価格設定で若年層の男女をターゲットとする。「総合型スポーツクラブといえば、フルスペックのトレーニングマシンや設備を好きなだけ利用できる点が強みでしたが、最近は多様化するニーズにきめ細かく対応し、一人ひとりが成果を実感できるようなサービスが求められています。総合型で拾い切れない客層は、個別のニーズに特化した新業態で獲得していく考えです」と新藤氏は話す。
こうしたプログラムや店舗形態の多様化のみならず、施設の外でのアクティビティにも力を入れている。「セントラルチャレンジ」と銘打ち、インストラクターや仲間と一緒にサイクリングやハイキング、マラソン大会などに挑戦するアウトドア企画だ。大会出場を目指した練習会も定期的に開催する。「セントラルチャレンジを日頃のトレーニング成果を試すための目標にしたり、仲間作りに活用してもらうことで、継続利用につなげていく」(新藤氏)という。
こうした屋外企画は、以前は店舗の掲示板で個別に告知していたが …