ユニークかつ効果的なプロモーションを展開する企業のトップに、どのような視点で販促を考え、展開しているのかを聞く。
薬樹は、神奈川・東京を中心とした首都圏に薬局を展開。店頭イベントなどを通じて、地域住民との密な関係を築きながら健康をサポートしている。店舗の事業内容は「調剤薬局」だが、同社の薬局は調剤だけではなく健康全般にわたる活動を行っているため、2010年から自社が展開する薬局を「保険薬局」と再定義した。人の健康のみならず、社会や地球の健康までをカバーする事業に取り組んでいる。
薬樹 代表取締役社長 小森雄太氏(こもり・ゆうた)
1964年、神奈川県生まれ。日本大学理工学部薬学科卒業。薬剤師資格を取得。東京薬科大学大学院に進学し、修士課程(医療薬学専攻)修了。大手製薬会社に入社しMRとして勤務。1994年、父親が創業した薬樹に入社、取締役就任。2002年、代表取締役に就任。以降、従来からの「薬樹薬局」に加え、「訪問薬樹薬局」「健ナビ薬樹薬局」「スロースタイル薬樹薬局Liko」をオープンさせた。
首都圏に4ブランドの店舗を展開
薬樹薬局の店舗
薬樹薬局上小町店(埼玉県さいたま市)の外観。木を多用した外装からは、健康を地球規模で捉え直す同社の理念が伝わってくる。
神奈川県大和市に本社を置く薬樹は、首都圏で146店(2015年4月1日現在)の薬局を営業している。店舗はコンセプト別に「薬樹薬局」「訪問薬樹薬局」「健ナビ薬樹薬局」「スロースタイル薬樹薬局Liko」の4ブランドで展開中だ。
店舗数がもっとも多く、薬樹の事業のベースとも言えるのが「薬樹薬局」だ。調剤室をガラス張りにして、調剤の“見える化”を実現させるなど、新たな店舗運営に積極的に取り組んでいる。
在宅医療にも対応可能な、きめ細やかなサービスを提供しているのが「訪問薬樹薬局」だ。「健ナビ薬樹薬局」は、治療中だけでなく予防を含め生涯にわたる健康をサポートしている。「スロースタイル薬樹薬局Liko」は“社会や地球とつながるライフスタイル”をコンセプトに、サプリメントをはじめ、オーガニックの食品やスキンケア商品なども揃える店舗だ。いずれの店舗も基本的には住宅や商店が立ち並ぶエリアに立地している。
同業他社が全国規模で店舗数を増やしていく戦略を取っているのに対し、薬樹の店舗は神奈川および東京を中心とした首都圏に集中しているのが特色だ。その理由について、薬樹 代表取締役社長 小森雄太氏は次のように話す。
「医療には地域特性があります。店舗が地域に深く根付いていれば、地域ならではの問題が見えてきますので、首都圏に店舗を集中させ、首都圏の住民が抱える課題に対応しています。同時に、ドミナント戦略でブランドの認知を高めることも、全国展開せずに首都圏に集中出店している理由です」。
店舗の中
調剤室をガラス張りにして、調剤の“見える化”を実現。カウンターには仕切りを付けて、来店客のプライバシーに配慮。自然光を取り入れた明るい店内は、とても居心地がいい。
顧客の生涯にわたる健康状態を良くする
栄養講座
店舗に常駐する管理栄養士が、健康に暮らすための食生活のヒントやアイデアを伝えている。参加者は店舗周辺の住民で、リピーターも多い。
子ども薬剤師体験
子どものときから健康に関心を持ってもらうことと、自分が口にする薬がどうやってできているかを理解してもらうことで、もらった薬を大事に飲んでもらうのが主な目的。
薬樹の事業における大きな特徴は、店舗において多彩なイベントを行っていることだ。
「店舗周辺の人たちにとって、自分の健康に不安を感じたとき、相談できる相手がいるのだろうかという問題意識がありました。もし身近にいないのであれば、医療や薬についての専門知識を持つ私たちがアドバイスできるのではないかと考えました。しかし相談してもらうには、私たちのことを地域の人たちに知ってもらわないといけません。そのために実施しているのが、店舗におけるさまざまなイベントです」(小森氏)。
その一例が、店舗の管理栄養士による「60代からの健康生活」や「カルシウムアップ~骨粗鬆症予防~」などをテーマにした「栄養講座」だ。「健康相談会」は、骨の強度や血管の状態などを専用の機器を使ってチェック。測定後に管理栄養士や薬剤師が健康について解説する。最近は、管理栄養士による「離乳食相談会」も開催。離乳食の作り方や味付けを伝え、参加者からは好評だ。
子どものときから健康に関心を持ってもらいたいという思いから、夏休みの時期には「子ども薬剤師体験」を実施している。チョコレートをまぜあわせて軟膏を作ったり、分包機を使ってラムネを包んだりと、薬剤師の仕事を疑似体験してもらっている。
ストレッチなどの運動プログラムも実施している。店舗近隣のスポーツクラブと組んで行うこともあり、スポーツクラブのカフェでは薬樹の管理栄養士が考案した“健康レシピ”を提供するなど、双方の連携も進めている。
行政と連携した取り組みも行っている。横浜市との連携による、血圧測定データの活用はその一例だ。利用者が自宅で測定した血圧データを、家族や医療機関にネットを使って送信する仕組みを整えた自治体は多い。しかしながら、送信したデータが十分に活用されていないケースもあった。そこで、血圧測定データを薬樹の店舗に送ってもらい、異常値が出ていないかチェックしている。また、測定データの送信がないときは …