半年間に渡る連載も今回で最終回となった。これまで5回に渡り、O2Oやオムニチャネル戦略を実現する海外での最先端の事例を紹介したことで、不可逆のこの「店舗での顧客の買い物体験のイノベーション」とも言えるオムニチャネルの発展の予兆を感じていただけけたと思う。最終稿の今回は、今後のオムニチャネルを巡る動きと来たるべき時代に向けて取り組むべきことを共有したい。
オムニチャネルのススメ
国内の消費市場は2013年度で年間約283兆円の規模であり、現在はそれをネット企業とリアル店舗で奪い合っているという構図である。その真ん中にあるのがオムニチャネルに影響される市場である。amazonや楽天がリアル店舗を出店する事に代表されるように、ほかのネット企業も次々と店舗出店を計画している。一方のリアル店舗を持つ企業もECサイトの拡充を急いでいる。まさにマルチチャネルであり、その先にそれぞれのチャネルが融合するオムニチャネルの世界へと通じている。
また、消費市場全体における日本のEC化率はおよそ5.6%の15.9兆円*1で、この市場はまだまだ伸びるはずだ。しかし国内市場を見た場合、日本は国土が狭いためすぐ近くに店舗があることや、商売において人との触れ合いを大事にするという文化特性もあり、あくまで私自身の肌感覚ではあるが、EC化率は30%くらいで歩留りするのではと考えている。リアルだけで完結する消費市場の残りが、オムニチャネルによって創出される消費市場という事になるが、それでもその規模は非常に大きいと考えられる。
ますます加速するデータに基づくマーケティング
一方この先数年間で、ネット上で当たり前のように行われているマーケティング、分析手法がリアルなビジネスでも当たり前のように実施されるようになると思われる。従って、それを実現するためのインフラやテクノロジーを持った企業がソリューションがどんどん出てくるだろう。
少し前にフェイスブックが広告のオープンネットワークをリリースした。つまり、これまでグーグルが独占していた市場に殴り込みをかけている形だ。グーグルが匿名のネットワークである事に対して、フェイスブックは実名主義という事もあり、よりリアルな世界に近いというのが、両者の大きく異なるポイントである。この実名主義の最大のプラットフォームであるフェイスブックが、彼らの保持している個人のデモグラフィックやウェブ上での行動履歴や趣味嗜好といった資産を活用して(活用範囲は国や地域によって色々と今後議論が出てきそうだが)、まずはウェブ上での広告配信をより効果的かつ効率的に行おうとしている。この動きは間違いなく、リアルの世界にも侵食してくると考える。
要は、フェイスブックIDを通じて…