かつて、「インターネットで買い物をするなんて」という意見が主流だった時代がある。しかし今では、性別・年代の差なく、ネット通販を楽しむ消費者が大勢を占めている。同様に、今後、多様なチャネル間を自由自在に行き来する消費者の姿は珍しくなくなるだろう。こうした環境下では、ターゲットの動きを詳細に把握することが勝負の分かれ目となる。
性・年代別による利用チャネル(業態)数の違い
業態種類数は、「スーパーマーケット(SM)」「コンビニエンスストア(CVS)」「ホームセンター(HC)」「ドラッグストア(DS)」「インターネット」「宅配・通販」「百貨店」「自動販売機」「その他」の9区分。性年齢別による購入業態の違いを見ると、男性は、SM、CVS、自販機がトップ3。10~20代と50~60代はSMのほうがCVSより多く、30~40代はSMとCVSがほぼ同程度になる。一方女性は、年齢が上がるにつれてSMの割合が多くなり、CVSが下がっていく。DSやインターネットの利用率は男性の2倍だが、自販機の利用は数%にとどまる。
○データ/INTAGE SCI
○期間/2013年9月~2014年2月
○エリア/全国
買い物客の多様性を把握する
オムニチャネル環境下のプロモーションのポイントとなるのは、「いつでも、どこでも」買い物ができるようになったとしても、消費者の、各チャネルに対する関与度には差があるということだ。オムニチャネル戦略の基本として、品揃えや価格帯を同じレベルに揃えても、すぐには各チャネルの消費者属性が均等になるわけではない。
例えば、10代男性であれば、コンビニエンスストアや自動販売機など主な利用チャネルは3つほど。一方、30代女性は、ドラッグストアやスーパーマーケットを中心に、多くのチャネルに訪れている。さらに、その動機は、「広告を見たから」「行くのが習慣になっているから」「ソーシャルメディアで見て、たまたま」などといった事前に触れた情報や、買いたい商品のカテゴリーやブランドによっても変わっていく。
「消費者属性×ブランドやカテゴリー×事前に接触した情報…こうした要素から、各チャネルに訪れる来店客のキャラクターはかなり詳細に描けるようになっていて、さまざまな要因によって複雑化していることが分かっています」と、インテージ執行役員 FMCG事業本部副本部長の村上清幸氏は話す。
しかも同一人物が、チャネルによって異なる購買行動を取ることも珍しくない。「スーパーに行くことがほぼ習慣化していて、日用品は割引などの刺激に反応してその場で購入する人が、ドラッグストアに対しては、ある商品のクチコミ情報などを踏まえ、目的意識を持って訪れて買い、さらに使った感想を積極的に発信していく、というタイプになる可能性もあるわけです」(村上氏)。
購買前・購買時・購買後
行動サイクルに適した情報提供
これまでAIDMAやAISAS、SIPSなどの購買モデルが考えられてきたが、人は場合に応じて、異なる心理プロセスを経て購買行動を取っている。メーカーは、自社ブランドの既存の、あるいは取り込みたいターゲットについて、流通も各チャネルの来店者に対して、どんな購買行動をとるタイプかを把握することが、販売チャンスを高めることにつながる。「特に重要なのは、彼らの購買の引き金になっていることは何か、その実態を探ることです」(村上氏)。そうしたことも、ソーシャルリスニングやスマートフォンを活用した調査によって可能になっている。
消費者がさまざまなチャネルで購入するようになる中で ...