「DMの開封面には特典を大きく表示」「紛れないように凝ったDMを」......。作り手が効果的だと思い込んでいることも、実は受け手に響いていないこともある、と話すのはトッパンフォームズの宇井剛史氏。受け手を基点にコミュニケーション上の課題を解決してきた宇井氏が、DM作りで見落としがちな、作り手と受け手のギャップを指摘する。
生活者の手元に届くダイレクトメディアを通じ、心に響くコミュニケーションを実現できるようクライアント企業をサポートする中で、作り手側が見落としがちなDM作りのポイントが明らかになってきた。当社ではDMに対する生活者の声を独自に調査し、科学的な手法を用いながら、受け手の心に響くソリューションを提供する「LABOLIS(ラボリス)※」を運営している。
(※LABOLIS/LABOratoryとLISteningを合わせた造語。「みんなの声ラボ」「さいえんすラボ」「伝えるラボ」の三つのラボラトリー機能を有している。)
ここでは、このLABOLISで長年蓄積してきたさまざまな調査や分析の中から、DM制作者が今すぐに取り入れ、受け手の気持ちに添った内容に改善できる三つのポイントを紹介したい。
ポイント1
DMの開封判断は5秒以内
「差出企業名」はきちんと伝える
受け取ったDMを開封するかどうかを判断する時間は、5秒以内という人が約90%にのぼる(グラフ1)。「DM開封面(例えば封筒表)に記載したことは全部読んでくれるはず」という前提でDMを制作していたら要注意だ。受け手はDMが必要か不要かを5秒という短い時間で判断している。そのふるいに残らなければ、開封面であっても内容を確認してもらうには至らないのだ。
続いてグラフ2を見てほしい。分かってしまえば当たり前だが差出企業名が開封判断の第一要素となっている。DMを企画する時、あなたはまず何から考え出しているだろうか?「珍しいDMでなければ手に取ってもらえないから大きさや形態から考え始める」「特典がないと振り向いてもらえないからインセンティブの予算と品物を吟味する」。どちらも重要なファクターだが、その前に「パっと見てどこから来たDMか分かるようにする」のが大前提だ。
例えば「以前に購入したあの商品のDMだ」といったことが伝わらないと、不信感が先に来る。「なぜこのDMがうちに来たのか?怪しいところじゃないか?」と思われたら、購入までスムーズにいくのは難しい。
まずは自分が何者かを表明し、それに気付いてもらう表現がDMの開封面にとって必要な要素である。