1.はじめに
第4回及び第6回の連載において「小売店舗の価値創造」について述べた。多くの実験項目の中の一つであるが、実験店舗(コープさっぽろ 西宮の沢店)に設置したライフステージコーナーという、販売なしの情報提示コーナーで4商品カテゴリーを中心とする、統一テーマによるクロス・マーチャンダイジング(以下クロスMD)を行って一定の成果を上げた。後に判明したことだが、2012年の11月は商圏内で、直前に出店したディスカウントストアの影響でライバルのR社も含み大規模な低価格競争が起こった月であり、実験店舗からもかなりの顧客が流出するという最悪の月であった(ID-POS分析による)。この最中での実験となり、対象店舗は、低価格に依存しない、価値重視の戦いで顧客単価を上げ、見事に勝ち抜くことができた。我々の実験がその土台づくりを担ったということで感謝をいただいた。
今回は、実験対象の主要4商品カテゴリーのうち、乳製品を取り上げて、さらなる調査を行う機会があったため、それについて解説する。この調査は、J-milkとの共同プロジェクトであり、さらに効果のあるクロスMDプロモーションの実現を模索するための調査である。我々は、そのコンセプトづくりを担い、年明けに向けて店舗実験(関東)を行う予定である。今度の実験では、前回のように広範な課題を設定せず、牛乳・乳製品のクロスMDという狭い領域に絞っており、それだけにその精緻さが問われることになる。
2.子育て期・シニア期にターゲットを絞った牛乳・乳製品のクロスMDの方向性
以前の「未来店舗の本質」研究会では、四つのライフステージ別に生活者の深層心理における本質的な生活ニーズと牛乳・乳製品を含む四つの商品カテゴリーに関しての本質を探った。これらが生活者の深層心理を探る新たなデプスインタビューの仮説的な項目となる。今回は牛乳・乳製品に関して特に重要と思われる上記の二つのターゲットに絞り、調査・実験を進めている。
重視項目的には、以下のようになる。
<項目1>
日常の食生活の重視点は、子育て期においては「子どもの成長」が最重要であり、次に「自分の健康」がくる。またシニア期の場合は「自分の健康」となるという点。