今年に入り、アサヒ飲料「アサヒ 十六茶」をはじめ、企業によるご当地キャラクターのプロモーション起用が増えてきた。「ゆるキャラグランプリ2012」で優勝した愛媛県今治市「バリィさん」をはじめ、くまモンに続くヒットキャラクターも生まれつつある。ここではご当地キャラクター事情に詳しい犬山氏が、販促・集客効果が期待できそうな注目キャラクターを解説。まだ商業的な起用は少ない今が、時代に先んじるチャンスかもしれない。
西日本編はこちらメロン熊(北海道夕張市・北海道物産センター夕張店)
北海道の大自然に育まれた凶暴な熊が
平和ボケした人類に警鐘を鳴らす!
おみやげ屋さんが夕張メロンと凶暴な熊を合体させて作ったグッズが大ヒット。「ご当地キャラ総選挙2013」では北海道代表として大健闘した。ほかのかわいいだけの熊キャラとは違い、イベントでは獰猛(どうもう)な牙をむいて子どもたちを泣かせ、ほかのキャラにもかみつくという一風変わったキャラ設定がうけている。その凶暴なイメージを生かし、大自然の驚異の象徴として広告に登場してもらってはどうだろう。防犯・防災グッズのメーカーや警備会社はもちろんのこと、コンピューターウィルスなど情報セキュリティの必然性を伝えるため、目に見えない脅威を可視化して分かりやすく解説するのにも役立つだろう。子どもに泣かれる凶暴キャラとしては、同じ北海道の「まんべくん」もオススメだ。
ジャンル ●防犯グッズ ●情報セキュリティ
東北合神ミライガー(東北6県)
東北6県の名産品を詰め込んだ
熱いメッセージを託せる"ご当地ヒーロー"
東日本大震災の後、ご当地ヒーロー界で最も有名な「超神ネイガー」(秋田)の作者でもある海老名保氏が作った"復興ヒーロー"で、東北6県のヒーローが合体して誕生したという設定。主題歌にはアニソンの帝王・水木一郎氏がボランティアで参加している。すでに復興イベントでのヒーローショーなどの実績を重ね、ファンが付いているので、物産展などで起用すれば集客が期待できる。また、熱い志を持つヒーローなので、被災地支援型のキャンペーンなどを行う際、コンセプトを象徴するキャラクターとして非常に活用しやすいだろう。「困っている人に手を差し伸べ、みんなで一致団結して未来を築こう」というメッセージが、多くの人々の共感を得ることは間違いない。
ジャンル ●物産展 ●復興支援キャンペーン
ふなっしー(千葉県船橋市非公認)
無名から一発逆転の大ブレイク!?
爆発的な集客力を誇る期待の新キャラ
「ゆるキャラグランプリ2012」では506位だったが、2013年2月にアサヒ飲料「十六茶」のテレビCMで大ブレイク。「ご当地キャラ総選挙2013」の決選投票では見事1位に輝いた。しゃべることができ、地元商工会のイベントですら400人以上のファンが駆けつけるほどの集客力があるので、テレビ出演や全国のイベントに引っ張りダコで、グッズもバカ売れ。7月には謎のロンドン出張も果たすなど、世界へ羽ばたく勢いだ。物産展などの集客の目玉として非常に有効だが、年内はスケジュールが詰まっていて、なかなかオファーが通りづらい状況。同じくしゃべるキャラには兵庫・尼崎の「ちっちゃいおっさん」がおり、こちらもテレビやイベントでの活躍が目覚ましく、ブレイクしつつある。
ジャンル●集客イベント
ぐんまちゃん(群馬県)
次期グランプリの最有力候補
苦節ン十年の愛されファンシーキャラ
初代ぐんまちゃんのデビューはなんと1983年。現在の2代目ぐんまちゃんは、かつて本格的にキャラクターデザインにかかわっていた県の職員がこっそり公募に提出し、採用されたデザインなので、キャラクターとしてのかわいさは筋金入りだ。さまざまなパターンのイラストが用意され、群馬県内のいたるところで活躍している。活動歴が長いこともあり、2012年のグランプリで3位を獲得した際には号泣する群馬県民が続出した。ハローキティやリラックマといった有名ファンシーキャラにも劣らぬ親しみやすいイラストが最大の魅力なので、ベビー用品や子ども向けアパレル、知育教材とのコラボレーションには持ってこいの逸材だ。同じくファンシー系キャラとしては、埼玉県深谷市の「ふっかちゃん」も人気。
ジャンル●ベビー用品 ●子ども向けアパレル
大崎一番太郎(大崎駅西口商店会)
著作権フリーで使い方はアイデア次第
消費者を巻き込むおしゃべりキャラ
商業利用や二次創作に至るまで著作権が解放されている。そのため、DNPデジタルコムをはじめとする地元企業とのコラボ実績も多く、今年6月には東芝や地元在住の声優・山口勝平さんとの共同開発により、合成音声技術によってキャラクターを自由にしゃべらせることができるシステムも開発。今夏のコミックマーケット期間中には、JR大崎駅の協力のもと、駅構内アナウンスが大崎一番太郎の声で放送された。企業とキャラクターとのコラボは使用条件で折り合いがつきにくい場合もあるが、一番太郎はデザインの改変も可能なため、消費者からデザイン案を募集してグッズ化するような巻き込み型のキャンペーンも容易に企画できる。また、人気声優による合成音声は、カーナビや館内放送に適しているだろう。
ジャンル ●音声アナウンス ●巻き込み型キャンペーン
犬山秋彦(いぬやま・あきひこ)氏キャラクター研究家 。1976年生まれ。自衛隊、ディズニーキャストを経てライターに。戸越銀次郎、大崎一番太郎などご当地キャラクターのデザイン・運営なども行う。著書に『ゆるキャラ論』(共著)、『しんかいくんとうみのおともだち』(絵本・イラスト)がある。 |