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販促NOW ツール編

請求者のほぼ100%が来店する、イヌイ薬局(鳥取市)の「アプローチブック」

米谷仁(感動販促研究所 代表取締役)

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イヌイ薬局が制作した「アプローチブック」。詳しく説明しないと伝わりづらい内容は、まず共感を促し、興味を喚起することが重要。それから紙でじっくり語るのが効果的だ。

人が商品やサービスを買う理由は、より快適に楽しく、幸せに暮らしたいから。あるいは、自分が抱えている「不」(不安・不便・不都合)を取り除きたいから。だとすれば売り手は、その商品やサービスを買うことでどのように幸せになれるのか、なぜ「不」を取り除けるのか、その理由を伝えなくてはならない。見た瞬間に「これは自分に必要な商品だ」と感じさせ、説明して共感を生み、信頼した上で買ってもらう。そんなアプローチが必要だ。

今回紹介する「アプローチブック」は、その名の通り消費者の心にアプローチするために活用されている。例えば、鳥取市にあるイヌイ薬局は、漢方による不妊体質改善の新規顧客獲得のためにアプローチブックを制作した。不妊はデリケートな問題なので、悩んでいる人(=潜在顧客)が気軽に相談に来ることもないし、ましてや薬局側から「不妊でお悩みですか」と声を掛けるわけにもいかない。不妊相談の大部分は、ウェブサイトから資料請求した人がより詳細な相談のために来店するパターンだが、これまではせっかく資料請求があっても、その先の相談にまで至らないケースが多かった。

そこで、資料請求者を確実に顧客化するためアプローチブックを制作。「私がほしいのは妊娠ではなく赤ちゃんなんです...」という表紙のキャッチフレーズで不妊に悩む夫婦の共感を呼び、内容に対する興味を喚起。本編では、不妊治療の基本的な考え方や不妊の原因、効果が上がる具体的なアドバイスなどを専門的な見地から伝えるとともに、体験者の喜びの声も掲載し、「まずはご相談を」と着地する。このブックを資料請求者に送付したところ、請求者のほぼ100%が相談のため来店するようになった。それほど反応率が高まった理由は、人はどうせお金を払うなら、信頼できる人を選びたいと考えるから。その気持ちに訴求するため、見込み顧客にとって有用な情報を、信頼できる根拠とともに発信する必要がある。今はソーシャルメディアなど多様な発信方法があるが、商材によっては「紙の冊子」の信ぴょう性が効果を発揮する。

膨大な情報の中から自社商品やサービスを選んでもらうには、プロとして情報を惜しみなく発信し、存在感をアピールすることが重要だ。その入口を確保するために、人が思わず反応して手に取ってしまうような販促ツールを7回にわたって紹介してきた。ビジネスは、あなたの商品やサービスで人々を幸せにする作業。人を幸せにするのに、遠慮などまったく不要だ。効果的なツールによって有用な情報をターゲットに届け、たくさんの人を幸せにしてほしいと願っている。

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米谷 仁(よねや・ひとし)氏

感動販促研究所 代表取締役。デザイン学校卒後、広告代理店、印刷会社を経て1988年 米谷ヒトシデザイン事務所、1990年 感動コーポレーション設立。以来「売れるデザイン」「人が思わず反応する販促ツール」をつくるために実験を重ねる。2010年 感動販促研究所設立。草食系マーケティング・デザイナーとして多くのクライアントを手掛けつつ講演・執筆なども行う。

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