
移動販売車「おまかせ便カケル」。車内には冷蔵庫も完備し、約1000品目の食品や生活必需品を搭載。毎日訪問エリアを決め、拠点となる店舗から片道2時間くらいの範囲を回る。
北海道内の28市17町に107店舗(2013年3月20日時点)を展開するコープさっぽろは、地域社会や地球環境に貢献する取り組みに積極的なことで知られている。それは、例えば道内の高齢者の安否確認を行うなど、一見"慈善事業"のように思える内容のものが多い。しかしこれらの活動が、同組合の事業領域である小売業の成長と密接に絡み合っている。
価格以外の付加価値をパッケージデザインで伝える

12年から販売開始したPB商品は、"産地"や"おいしさへのこだわり"が一目で伝わるパッケージデザインで、価格訴求型の商品と差異化。PBの商品数は、今後3年間で200品目への拡大を目指す。
コープさっぽろの事業活動は社会貢献要素を含むものが多く、内容は多岐にわたる。そのうちの一つが、「北海道の循環型経済の推進」を目的とした商品開発だ。2012年にスタートしたプライベートブランド(PB)の商品は、道内での製造にこだわり地産地消に貢献しようというもの。また、11年からは、北海道産の飼料米を使って育てた畜産物を「黄こがね金そだち」シリーズとして販売し、食料自給率の向上や農業・畜産業支援につなげている。
こうした取り組みに力を入れ始めたきっかけが、08年1月に発生した中国製冷凍餃子の毒物混入事件だ。「この時から中国製のコープ商品の販売を中止し、地元産の材料や商品にこだわる方針に転換しました」と話すのは、同組合 経営企画室室長の村上伸吾氏。同年6月には材料・製造ともに北海道内にこだわって独自開発した商品シリーズ「北海道100」を発売し、道内のメーカー各社と共同で品目数を拡大していった。
同シリーズは、例えば中国製冷凍餃子のコストが1個10円だったのに対し、北海道100の冷凍餃子は40円と割高になる。販売価格も上がることから、当初は既存顧客が離れる懸念もあったが、食の安全に対する意識が高まる中でこの取り組みは支持され、商品の販売は好調だった。さらに、良質で地産地消に貢献する商品をより低価格で提供できないかと考えたことが、現在のPBにつながったという。「北海道100の取り組みにより、価格が多少高くても良質な商品を求めるお客さまは多いことが分かった。ただ、産地などのルールを厳格にしすぎるとどうしても高価格になってしまうため、PBはより多くのお客さまに選ばれるラインアップを目指しています」と同氏。
PB開発にあたってこだわったのがブランディングだ。パッケージデザインや商品名で"産地へのこだわり"といった付加価値を可視化し、その価値を求める客層に訴求する。
また、店頭キャンペーンとしては、09年から毎年10・11月に、「エコプロジェクト協賛商品」の販売を行っている。これは、消費者が協賛メーカーの商品を1点購入するごとに、メーカーが2円を協賛金として拠出し、コープさっぽろが進める二つのエコプロジェクト「コープ未あした来の森づくり基金」と「ホッキョクグマを応援するプロジェクト」に使うというもの。
店頭ではポスターなどを掲出して大きく展開しているが、消費者にとってこのキャンペーンに参加することは、"環境貢献できる"こと以外に、賞品が当たるなどのメリットはない。