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拡散する時代 人を動かす表現はテレビCMに学べ

若手CMクリエイター座談会「僕たちはテレビCMでもっと『仕掛けて』いける!」

泉田 岳(TOKYO)熊谷正晴(TBWA HAKUHODO)中塚未央(博報堂)山田智和(キャビア)

テレビCMの今後を担う若手クリエイターは何を思い、どうテレビCMと向き合っているのか。プランナー、コピーライター、監督、4人のクリエイターにそれぞれの立場から話してもらった。

(左から)TOKYO 泉田 岳
TBWA\HAKUHODO 熊谷正晴
博報堂 中塚未央
キャビア 山田智和

    TAKESHI IZUMIDA'S WORKS





    上 練馬区/ Yori Dori Midori 練馬「 願いの木」篇
    下 バンダイナムコエンターテインメント/ ドリフトスピリッツ「名車コレクター」篇

    MASAHRU KUMAGAI'S WORKS





    上 日産自動車「GT-R×矢沢」篇
    下 日産自動車「セッション×矢沢(新型セレナ誕生)」篇

予算も影響力もケタ違い それがテレビCMの面白さ

中塚▶ 私は担当している仕事のほとんどがテレビCMです。プランナーとしてショップジャパンのワンダーコアや杉村太蔵さんが出演するスレンダートーン、渡辺直美さんが出演するNTTドコモのdマガジンなどのCMを担当しています。昔からバラエティ番組が大好きなテレビっ子だったので、バラエティに負けないCMをつくりたいと思いながら企画を考えています。

泉田▶ 僕もCMが多くて、会話劇で15 秒、30秒のものをメインにつくっています。

熊谷▶ 僕は2005年に博報堂に入社して、2008年にTBWA\HAKUHODOへ異動しました。CM案件は車が中心で、日産の「やっちゃえNISSAN」シリーズを担当しています。企画を考えることもありますが、中塚さんのような純粋なプランナーというよりはコピーライターとしてCMに携わることが多いので、コンセプトやナレーション、セリフを考えることが主な役割です。

山田▶ 基本は映像監督ですが、CM、ネット動画、ミュージックビデオ(MV)、自主制作をほぼ同じ割合でやっています。最近だと、CMは森絵梨佳さんが出演するユニクロの「ブラトップ」やNTTドコモの「感情のすべて/男女」、読売新聞の五輪CMを担当しました。

中塚▶ 私がCMばかりやっているのは、CMが一番効くという実感値があるからです。私の地元・広島の友人はCMは見ていますが、ネット動画は世間で話題になったものもほぼ知られていません。だから、地方にまで広く認知度を高めるにはCMが一番だし、CMを流せば商品は売れます。私は商品を売りたい気持ちが強いので、CMをつくることが一番面白いんです。

泉田▶ CMとネット動画の違いは“受け手”で、CMをつくるときには「これはおばあちゃんも見るだろうな」とネット動画との受け手の違いを意識しながらつくります。ただ、つくり方に関しては、CMもネット動画も根本は「言いたいことを伝えるための手段」なので、違いはないと思います。

中塚▶ そうですね。私も以前、ネットでウケるものを意識したわけではないのに、テレビ用につくったワンダーコアのCMがネットでバズったことがあります。サウンドロゴの変な使い方をしてみたい、ギャップのあるキャスティングをしたいなど、やりたかった要素を詰め込んだ結果、マッド動画的なものになって、偶然ネットで拡散したんです。だから、今はテレビCMも面白いものであればネットでバズる時代だと思います。

熊谷▶ TBWAでは媒体は一度忘れて、まずは根っこの部分から考えることが多いです。僕やアートディレクター、インタラクティブプランナーなどがゴロッとしたコアアイデアを持ち寄るところからはじめ、そこから適した媒体の形に落とし込みます。CMのいいところは、より“ 本気感”が出るところ。ある担当者の方が「CMを打つとインナーモチベーションが上がる。だから投下量が少なくても打つこと自体に意義がある」とおっしゃっていて、なるほどと思いました。昨年の「やっちゃえNISSAN」では、1回目の放送を『24時間テレビ』の60秒枠に絞り、その後に30秒CMを流す、という設計になっています。

山田▶ CMは予算が豊富にあるところがいいですよね。実験もいろいろできるし、うまくやればハリウッド映画級の映像も撮れます。スタッフも機材も変わるから、MVでは不可能なことが実現できるところが面白いと感じています。CMにはクライアントがいて、さまざまな制限があるのは事実ですが、伝えたいテーマがあって映像が生まれるのはどのジャンルでも同じなので、僕はそこにあまりストレスは感じません。むしろ周りの人が大変そうだなと思ってますが(笑)。CMは少し面白いことをやれば目立てる世界なので、ライバルも少ない。潜在能力が高すぎるジャンルだと思います。

熊谷▶ 確かに、視聴者は「テレビなのにこんなことをやるんだ!」という驚き方をしてくれますね。仕掛ければ目立つチャンスはあります。

何を起点に考える?各自のCM発想法

中塚▶ 私は自分から表現したいものがないので、お題を渡されないとつくれません。だから、制限があるほうが燃えます。企画を考えるときはオリエンの資料を読み込んで、それに忠実に答えようとします。

山田▶ 中塚さんがつくるCM って本当に面白いですよね。いつもどうやって考えているんですか?

中塚▶ 「天からアイデアが降ってきた」みたいなことは一切なくて、机に向かってオリエンシートを見ながら真面目に考え続けているだけです…。ワンダーコアのときは資料に「腹筋マシンで、体を倒すだけで腹筋ができる」とあったので、そのままやれば面白いんじゃないかと思いました。“ 倒す”を“倒れる”にしましたけど。後は、日常の中に暴力的にサウンドロゴが入ってくると面白いと高須クリニックのCMをつくっていた時に感じていたので、それをやろうと。さらに強面の人でやったら面白さが凝縮するんじゃないかと思いました。「タレントの使い方が面白い」と言われることもありますが、私は趣味がキャスティングなんです。夢はドラマや会話劇でタレントを使うことで …

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