2016年度のTCC新人賞が発表となった。本年度は、最高新人賞1名、新人賞23名が選出されました。最高新人賞を受賞した渡邊千佳さんは、同じ長崎バスでTCC賞も受賞。この広告がどのようにできたのか、渡邊さんに聞きました。
TCC最高新人賞
名もなき一日を走る。長崎バス
長崎自動車/長崎バスシリーズ/TVCM
【代表コピー】
「南越のふたり」篇
「おねぇちゃん、バスも寒いとかなぁ ブルブルってしたばい」
「発車します」
街まで1時間。
ふたりにとっては、大冒険だ。
「フフフ」
名もなき1日を走る。
長崎バス
「長崎のバス」の、エモーショナルな価値とは
「映画をつくるぞ」…長崎バスさんからのCM制作依頼を受けての、クリエイティブディレクター 今永政雄さんの第一声。まだ役所広司さんが監督、主演に決まる前のことです。「お前は脚本ね」と、ストーリー担当を言い渡され、ハトが豆鉄砲くらったような出だしでした。そもそもCMの目的は「運転者募集」。近年、バス運転手は、待遇面を保障しても人が集まりにくいという課題がありました。そこで「映画」とは如何にと…。
…ですがその「映画」こそがディレクションでした。CMでは、この仕事の機能的価値ではなく、エモーショナルな価値を伝えよう…と。つまり「ストーリー」です。例えばディズニーランドのキャストを目指す人の多くは、おそらくお給料以上に、そこで得られるエモーショナルな価値に惹かれている。バスを運転する人が得られるエモーショナルな価値を見つけて、そこをきちんと描くことができれば、この仕事に魅力を感じてくれるのではないか。子どもの頃、バスの運転手さんに憧れた気持ちを大人が持つような。そして現役運転手さんのハンドルを握る手が、ぎゅっと強くなるような。そんなCMを目指しました。
「名もなき1日を走る。」の「名もなき1日」は、バスという存在への仮説として、最初に書いたものです。バスの価値とは何か…考えながら、実際に長崎市内を走るバスに乗って、車内を、街を、ずっと眺めていました。長崎って、とにかく坂が多くて、自転車など役立たずなんです。歩きもしんどい。足の悪いお年寄り、坂の上に住む主婦、遠くの学校へ通う子どもなど …