「デザイン会社の未来」「デザイナーの未来」をテーマにした対談シリーズがスタートします。新しいチャレンジを行うデザイナー・アートディレクターに話を聞きに行くのは、アーキセプトシティの室井淳司さん。第1回の今回は、サムライの佐藤可士和さんが登場します。今年4月に新たに建築家の齊藤良博さんをメンバーに迎えるなど、新たな動きを見せるサムライ流の“デザイン組織進化論”とは?
最近の新しい活動は「空間」「アート」「文化交流使」
室井▶ これまでサムライは企業の経営課題をデザインで解決されてきましたが、今日は可士和さんがサムライという企業をこれからどうデザインしていくのか、おうかがいさせてください。
佐藤▶ サムライを立ち上げて今年で16年。ここ10年ぐらい、コンサルティングとクリエイティブをブリッジさせるような仕事をずっと行ってきました。ユニクロ、楽天、ヤンマー、三井物産などがその代表で、経営者と共に新たなビジョンやビジネスモデルを考えて具現化していくような仕事です。今もそれは継続していますが、ちょうど最近新たな変化が生まれています。その1つが建築・空間系の仕事です。これまでも「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」や「ふじようちえん」など空間の仕事は行ってきましたが、関わっているプロジェクトで空間ディレクションのない仕事はほぼありません。楽天のオフィスやDAIWAのフィッシングショーなど、ブランディングの一環としての空間の仕事は非常に多い。そこでこれをよりシャープに精度を上げてやりたいと思ったことが、建築家・齊藤良博さんの加入に繋がりました。齊藤さんとは昨年オープンした代官山の「FLUX CONDITIONINGS」の仕事などで組んでおり、今年4月に正式に入社してもらいました。社内に建築家がいることで、ブランド戦略の視点を持った新たな環境の創出ということがよりスムーズにできるようになったと思います。
室井▶ 齊藤さんはこのサムライのオフィスに出社されているんですか?
佐藤▶ いえ、新たにもう1つオフィスをつくったのでそちらにいます。そこには、齊藤さんの会社に元々いたスタッフと、アートディレクターも常駐しています。もう1つ、最近変化を感じるきっかけになったのは有田焼の仕事です。工業デザイナーの奥山清行さんが全体プロデュースをしている「ARITA 400 project」という有田焼創業400年事業があり、2016年がちょうど400周年ということで、ビートたけしさんと建築家の隈研吾さん、そして僕に「ゲストアーティストとして有田焼の作品をつくってほしい」と依頼をいただきました。9カ月間、有田焼の窯元に通い、器の設計から絵付けまでを行いました。これは自分の中ではかなりインパクトがありました。昨年僕はちょうど50歳になったんですが、その節目に「アート」と「建築」が新しい話法として入ってきて、企業ブランディングやコミュニケーションの仕事とも繋がった感覚です。他にも …