アイデアとは新しい組み合わせである
『アイデアのつくり方』(CCCメディアハウス)を初めて手にしたのは、美大受験の予備校に通っていたとき。同じ予備校で尊敬していた友人に。この本いいよ」と薦められたのがきっかけです。その友だちはアートやデザインに詳しいだけではなく、流行の半歩先を颯爽と走っているような人。感度が高く知的で、今から30年以上前に「デザインは表層的なものではなく、経済も動かす」といった話をしていたほどです。そんな友人がすすめるなら間違いないだろうと、買ってみました。
デザインの見方
私がデザイナーになろうと思ったのは高校3年生のときでした。通っていた学校は美術系ではなく、朝の6時から補習があるほどの進学校。勉強漬けの毎日に「このまま大人になるのはつまらない。脇道に逸れたいな」と思うようになり、面白いほうへ逃げるように美術系予備校の夏期講習へ通いはじめました。そのときはちょっとしたアウトロー気分。絵を描くことは昔から好きでしたが、予備校へ行ってからは周囲のレベルの高さに打ちのめされました…。
そこで受けた講義をきっかけに、グラフィックデザインのかっこよさを知り、デザイン学科を目指すことにしました。美大には一浪して入学しましたが、浪人中には素敵なデザインとの出会いもありました。TY NANTのボトルパッケージです。
当時出版された「PEN」のデザイン特集に、ミネラルウォーターのボトルが掲載されていました。そのひとつが、TY NANTです。ボトルの形をとどめていない、水そのものを形にするような自由な発想。こういうパッケージもあるんだと感銘を受け、私の既成概念は打ち壊されました。余計な装飾が一切ないTY NANTに惹かれたのは …