朝井リョウ『ままならないから私とあなた』
(文藝春秋)
朝井リョウさんの新作は、タイトルのみのシンプルな装丁だ。デザインを手がけた大久保明子さんへの、著者からのリクエストは「白地に文字だけでシンプルに作りたい」ということだった。「白地に文字のみ、ということを念頭に置きながら原稿を読み、今の形が最初にぼわぼわと頭に浮かんできました」。
タイトルの独特の書体と水色の箔が、このデザインの肝。大久保さんはタイトル文字を特色2色のグラデーションにし、さらに箔をランダムに散らしている。「近未来的な内容でもあること、音楽の通信的なイメージ、が伝わるように、また少女の不安な気持ち、など合わせて文字を作っています。箔が使えるかどうかもこのデザインの大きなポイントだったので、最初に確認して作りました。この水色の箔は初めて使いましたが、爽やかで綺麗な色だと思います」。
カバー、表紙、扉には同じ用紙を使用。校正時にそれぞれ2種類の用紙で試し、色の出方、箔ののり方で、この用紙に決めたという。帯はパール系の用紙を使い、カバーの箔と合わせて、全体に「光る」イメージに仕上げている。
UA『JaPo』
(SPEEDSTAR RECORDS)
アーティスト UAの新作アルバムのアートワークは、さまざまな色で染め上げられたUAの横顔が印象的だ。「顔にペイントすることで、UA曼荼羅をつくりたいと思いました」と話すのは、今回のアートワーク、そして映像の撮影を手がけた信藤三雄さん。
制作の依頼を受け、UAから話を聞き信藤さんが理解したキーワードは、日本の超古代文明、ホツマツタエ、カタカムナ、神代文字、アイヌ、琉球、沖縄、ネイティブアメリカン、パラジャーノフ、クストリッツァ、タルコフスキー等々。「そもそもお互いに興味の対象も近いので、目指す場所はぼんやり見えてきました」。
タイトルの『JaPo』は、アイヌ語で「陸(Ja)」と「子(Po)」を表わす言葉。不思議な形をした書体は、神代文字とアルファベットと古代文字をつなげて制作したという。「このアルバムでは、日本とは、日本人とは何者なのか …