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イラストレーター 塩川いづみさんが選んだ4冊の本

塩川いづみ

クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に生かしているのか。第86回目は、イラストレーターの塩川いづみさんに、仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。

『グリム 白雪姫と七人の小人たち』

ナンシー・エコーム・バーカート(画)、八木田宣子(訳)(冨山房)

古い記憶の中で、特に印象に残っているのがこの本。その後影響を受けた本は数あれど、物心ついたころ視覚的に記憶に刻まれてたものの影響力は大きく、いまでもそれを目にするたび頭の奥の方が熱を持ちはじめる。表紙の裏に私が生まれる2年前の日付と母の名前が記してあるので、実際には私が買い与えられたものではなくて両親の本棚から勝手に引っ張り出してきて見ていたのかもしれない。子供用とはいえないような淡く美しい色調、髪の毛の一本一本、葉脈の細部までが丁寧に描き込まれた繊細な表紙の絵。大人になった今ページをめくっても十分に魅了される絵なのだけれど、幼い私は一見穏やかで美しく見えるこの物語に含まれるホラー味や(それは女性の嫉妬だったり、業のようなものだったりするのですが)、残酷なまでにハイコントラストで描かれる光と影を感じ取って、本当のところはよくわかっていないまでもゾクゾクと刺激されていた。

絵描きになった今、女性の絵を描くときにそのゾクゾクは衝動の一つにある。表層には立ち上がってこない個々の物語を想像する。絵本の表紙に描かれた白雪姫は一体どこを見つめていて何を考えているんだろう。もの言いたげな口もとに言葉を探してしまう。

『平行植物』

レオ・レオー二(作・画)、宮本淳(訳) (工作舎)

古本屋でこの本を手に取った時はたしか植物を描く資料を探していたのでした。パラパラと中を開くと植物にまつわる伝承や伝聞、註釈、スケッチなどの研究報告。珍しい植物だなあと眉間にシワを寄せながら読み進めること数分、ハッとあることに気づき …

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