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私のクリエイティブディレクション論

個性を打ち出しつつも、集団の力を最大化する仕事

伊藤直樹

2011年に設立したPARTYは、「チームでものづくりをするための会社」だと伊藤直樹さんは言う。ものづくりとは、表現だけではない。さまざまな「体験」をつくりだすのがPARTYの仕事。その中で、CDに求められることは何かを聞いた。

伊藤直樹(いとう・なおき)
PARTY クリエイティブディレクター/CEO。静岡県生まれ。アサツー ディ・ケイ、GT、ワイデン+ケネディトウキョウを経て、2011年にPARTYを設立。これまでにナイキ、グーグル、SONY、無印良品など企業のクリエイティブディレクションを手がける。最近の仕事に、成田空港第3ターミナルの空間デザインやサンスターのハミガキIoT 「G・U・M PLAY」など。2016年、Fast Company誌が選ぶ世界の「The Most Creative People in Business1000」に選出される。経済産業省「クールジャパン官民有識者会議」メンバー(2011、2012)。ONE SHOW国際ボードメンバー。京都造形芸術大学情報デザイン学科教授。

個性を打ち出しつつも集団の力を最大化する仕事

ーPARTYはCD集団として出発しましたが、CDの役割をどう考えますか?

僕は学生の頃から映画が好きで多大な影響を受けているんですが、ものづくりの理想は「作り方はハリウッド、作品はヨーロッパ」だと思っています。どういうことかというと、ハリウッドのようなプロデューサーを中心とした集団創作システムを持ちつつ、作品はヌーベルバーグ(1950年代末のフランスで興った若手監督たちによる自由映画運動)のような作家主義ということです。つまり、一見相容れないようですが、「作家性を伴う集団創作システムは可能か?」が僕のひとつのテーマなんです。

一方で、今のクリエイターを取り巻く制個性を打ち出しつつも集団の力を最大化する仕事作環境に目を向けると、機材の価格は下がり、スペックは上がっている。分業せず一人で完結できるフルスタック型のクリエイターが活躍できる環境になっています。同時に、スカイプやハングアウトを使ったネットワーク型のものづくりの環境も整っている。クラウドソーシングも盛んになっています。僕が教えている京都造形芸術大学では、千円札を150のピースに分け、学生が1人1ピースをA3用紙に正確に模写する「クラウドソーソングの授業」を行っています。それを集めると、すごく精緻な千円札がものの10分ほどででき上がる。ある種の単純作業にはクラウドは力を発揮しますが、同時に、それはAIに取って代わられる分野かもしれないわけです。

これがいま表現に関わる人に突きつけられている現場で、その中で自分たちはどうするのか?が問われている。フルスタック型は、何年かに一度ものすごい天才というのは出てきますから、僕ら普通の人間は、違う形で勝負しなければいけない。PARTYをつくった意味はそこにあって、集団創作をすることで一人ではつくれない規模の制作物を高次元に実現するつくり方をまず開発する。そして、そのやり方を通じていいものを世に継続的に送り出していこう、ということなんです。

その実現のためのキーパーソンとなるのがCDです。先ほども話したように、僕はつくり手の個性が見えるのがいい制作物だと思っています。だからPARTYでも、それぞれのCDに、個人の色を出したものづくりをしてもらっています。PARTYのCDがその人らしいものをつくれば、それがPARTYらしさになる。CDに限らず「◯◯ディレクター」とつく人は、制作の過程で個性を出すことが求められる人だと思います。若手には「自分の作家性を出したければ、早く◯◯ディレクターになれ」と言っています。

PARTYでは通常8人程度(エンジニア、プランナー、アートディレクター、デザイナー、コピーライター、プロデューサー、プロジェクトマネージャー、CD)でチームを組みます。違う職能が集まって、最大限に力を発揮しながらせめぎ合い、時には領域を侵しあう。まだ途上段階ですが、そういう状況を生みだしながら、集団創作のあり方を進化させていこうとしています。

ーチームメンバーやクライアントに対し、CDはどんなふるまいが求められますか?

CDはチームの陣頭指揮を取る人ですから、まずはそのプロジェクトに自身の個性をはっきり打ち出してほしい。さらにチームを率いていく上では「エドゥケーショナル」(気づきを与える)であるべきだと考えます。例えば ...

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