ノルウェーのデザインエージェンシーANTIが手がけた「ベルゲン国際フェスティバル」のリブランディングは、デザインを基軸にオンスクリーンからリアル空間まで一貫したクリエイティブを展開し、成功を収めた。ANTIのクリエイティブディレクターエンドレ・ベレツェンさんにプロジェクトについて話を聞いた。
若者をもう一度呼び込むためのリブランディング
ノルウェー西岸の都市ベルゲンで毎年開催される「ベルゲン国際フェスティバル(Bergen International Festival)」は、1953年に設立された北欧最大の総合芸術祭だ。ノルウェーの中でも最も長い歴史を持つ、音楽と演劇を中心とした祭典である。昨年は15日間の開催期間中、人口25万人のこの小さな街に20の会場が配置され、250におよぶ個性的なイベントが連日開催された。
しかしさかのぼること3年前、同フェスティバルは若年層の来場者の減少という課題に直面していた。その現状を打開するため、若い感性にアピールし、若返りをはかるためのリブランディングが計画された。「Playful!(遊び心を!)」キーワードに、新たなコミュニケーション戦略の方向性が策定され、その実現を担ったのが、ベルゲンにオフィスを構えるデザインエージェンシー ANTIである。ANTIのクリエイティブディレクター エンドレ・ベレツェンさんは、「フェスティバルには野心あふれるディレクターとコミュニケーションチームがおり、それゆえに我々は前向きのこの仕事に取り組めました」と話す。
フェスティバルのプログラムは、若者に身近なストリートパフォーマンスから伝統的なクラシック交響曲、前衛芸術まで幅広い。求められていたのは、フェスティバルがすべての人たちに“同じ声”で語りかけるためのビジュアル言語だった。
「静的」と「動的」の両面からデザインする

03 楽曲を制作できるデジタルコンテンツ「Sound Smith」を開発。正方形のグリッドの中の好きな場所を指定していくと、楽曲が生成される。できあがった“楽譜”のビジュアルもアイデンティティのバリエーションになっており、Facebookで曲をシェアするとフェスティバルのブランドも拡散される設計。
「私たちの最初のタスクは、音楽、アート、デザインの共通分母、つまり“コネクター”となる要素を探すことでした」とベレツェンさんは話す。そして見つけたのが、音/静寂、インク/紙、オン/オフ、1/0…といったそれぞれのアートの形態を成り立たせる最小限の形。表裏一体、一方なくしては存在できないという対の関係性だ。
ここを起点に考えられたのが ...